04 腹へった

 三日三晩の間、生死を彷徨った俺復活。

 パーやん曰く、三日間の間、ほんまに生死を彷徨ってたらしいと聞いた。

 魔力を体力に還元しつつ、解毒の魔法をかけ続けてくれてたんやと。

 えーっと、指輪の能力で俺に魔法をかける事が出来るんや……。

 俺の意思も無かったのに?

 

「生命維持に必要な措置を行ったのみです。」


 などとしれっとつぶやく。

 まぁええわ。助かったんは確かやし、これ以上文句言うてもしゃーないわな。

 とりあえず、あのソテツの実は食べれんっちゅー事は分かったし、一つ勉強になったで。

 そういえば、爺ちゃんに聞いた事があるわ。 百聞は一見に如かずってな。

 書物で見たり人から聞いたりしても中々覚えんけど、実際に体験したらもう完璧に覚えるねんな。

 むしろ、行き過ぎて木の実恐怖症になりそうやで。


「ソテツの実は適切な処置をしなければ食用には向きません。」


 はぁ?

 今、しれっと何か爆弾発言しよったで、こいつ。

 え?もしかしてあの実が食べれへんって、最初っから分かっとったっちゅー事かいな?


「はい。」


 いや、ハイ!やあらへんがな。

 元気いっぱいに答えたらえーっちゅうもんちゃうで!

 ほな何か? 俺があんだけのたうち回って、三日三晩?寝込んだんも、その情報が最初っから分かっとけば無かったっちゅー事やないんかい?


「間違いありません」


「どないやねん!」


「お前の頭ん中どーなっとるっちゅーねん!」


「脳みそ引きずり出してちゅーちゅーしたろかいっ!」


 まぁ、脳みそなんかあらへんのは分かっとるけどな。

 とりあえず、腹立ったから怒鳴るだけ怒鳴ったったわ。

 勢いで。

 勢いは大事やで。


「命に別状が無いと分かってた事と、一度痛い目に合わないとなんだか私に依存して何も成長しないのでは無いかと危惧したので、実行に至りました。」


 と、何ともまぁ迷惑な話やで。


「お前は俺の母ちゃんか!」


 右手を目の前から約45度素早く右側に”ビシっ”と振る。

 ついつい身振り手振りも使ってツッコンでしもたがな。

 実際の母ちゃんは、俺の事放置しとったけどな。

 爺ちゃんに教えてもろたお節介な奴に対するツッコミやで。


「あんなぁ、俺は痛いんも疲れるんも、気持ち悪いんも嫌やねん」


 頼むからそういったことにならんように、事前に言うてやぁ。

 とパーやんに懇願する。


「かしこまりました。 しかし、今回の事で、マスターの解毒能力は一気に成長を遂げました。」


 んあ?

 また、訳分からん事言い出したで。

 解毒能力? なんで、成長するん?


「ご存じかどうか分かりませんが、この世界では命に係わるような強い刺激があると急成長するようになっております。 死んでしまえばそれまでですが……」


 ふむぅ……

 そういえば、俺の魔力も小さい頃から、悪戯目的とはいえ無茶な使い方をしては、頭痛で三日間寝込んだりしてたかな……。

 そういった無茶なことが何でもかんでも成長につながると。

 せやから、こいつは俺が死なんければ成長につながるからいちいち止めてこんと……。


 びみょー……。


「微妙やで! 確かに成長はしたいけどな、痛いんやらなんやらは嫌やねん。」


 今度からは、ちゃんと言ってやー。

 最初から覚悟して臨むんと、不意打ちでなるんとやったら、最初っから覚悟の上で毒でも食らったるから、ちゃんと教えてやー。


「かしこまりました。」


 一応の理解を示してくれたところで、三日ぶりにお腹が”ぐぅぅ”と鳴る。

 指輪と話して元気が出るとは、なんだか微妙やけど、元気は出た。

 元気が出たら、お腹も空くっちゅーねんな。

 さて、この島に来てからまだ三日か四日しか経ってへんねや。

 いよいよ本格的に食料をどうにかせな餓死するで。

 死ぬ原因が餓死なんて、元領主一族の俺としては、死んでも死に切れんで。

 なぁ、パーやん。 なんか良い方法無いやろか?


「サーチかチェックがおすすめですね。」


 よー分からんけど、ほな、とりあえずチェックしてや!チェック!

 俺は植物を思い浮かべながら、”チェック”を唱えた。

 すると、指輪が一瞬光り、青い光の波紋が指輪から溢れ出す。

 少し頭痛がした。 

 少々魔力を使うようやな。

 しばらくの間、波紋が広がったと思ったら、不意に指輪にスクリーンが現れる。

 最初に見たこの島の地図だ。

 結構な広範囲をチェックしたようやな。

 相変わらずの青い点滅と赤い点滅、それ以外にもあちこちに果物のような模様が緑色に点滅しるんが見えた。

 

「えーっと、この果物みたいな模様の緑点滅はもしかして食べれる植物って事かいな?」


 俺は地図の模様を見ながら、パーやんに問いかける。


「はい。 今思った事が反映されます。 つまり現在の食用可能な植物を表しております。」


 そして、さらにパーやんは話しを続ける。


「ちなみに、植物以外にも動物性たんぱく質を摂取する事をおすすめします。」


 と言う。

 この島って魔獣がうようよ蠢いてるんやけど、いよいよ魔獣を食べんと生命維持が出来へんっちゅー事なんやろね。

 食物だけでもお腹は満たされるかもやけど、動物も食べなあかんのよね。

 昔爺ちゃんも食事だけはバランス良く食べろって言われとったもんね。

 人生十二年と四か月、ここにきてやっと、魔獣を退治する事が必要なんやと、決心した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る