139 ぬりかべ令嬢、驚く。
バラ園から食堂に移動した私は、そこで久しぶりに商会の皆んなと再会した。
「アメリアさん……! ジュリアンさん!」
「ミアちゃん!! 無事で良かった……!」
アメリアさんはそう言って駆け寄ると、私をぎゅっと抱きしめてくれた。
「もう! やっと目覚めたって聞いたのに、突然実家に帰ったって知ってびっくりよ! 本当にすっごく心配したんだから!!」
「うぅっ……ごめんなさい……!」
アメリアさんに抱きしめながら怒られて、随分心配させたんだなぁ……と反省する。
「ほんま、目が覚めて良かったわ。ミアちゃんずっと寝とったから、皆んな心配しとったんやで」
アメリアさんにぎゅうぎゅう抱きしめられている私の頭を、ジュリアンさんがポンポンしながら教えてくれた。
「ジュリアンさんも、心配掛けてごめんなさい」
「ミアちゃんはトラブルホイホイやねんから、自覚せなアカンで」
……はうっ! ハルと同じ事をジュリアンさんにまで言われてしまうとは……!
それから食堂に居るフリッツさんやエーファさん達にも無事だった事を喜ばれ、久しぶりにお料理をご馳走して貰う。久しぶりのお料理はとても優しい味がして美味しかった。
それからマリアンヌを皆んなに紹介するとすぐに打ち解けて、アメリアさんと歳が近いとわかり、二人はすっかり仲良しになっていた。
皆んなで楽しくお昼をいただいた後は、研究棟で話し合う事になっていたので、マリカ達と一緒にそちらに向かう。
すると、研究棟を包むように伸びていた蔓バラ達がすっかり無くなっている事に気が付いた。
まるでお伽噺に出てくるような可愛いかった外観が、蔓バラが無くなった為か、寂しげになってしまっていて地味にショックを受けてしまった。
「あんなに可愛いかった蔓バラが……!」
「これでもかなり回復した」
ショックを受けている私に、マリカが下の方を指を差したので見てみると、土の中から建物に蔓を伸ばそうとしている蔓バラが目に入った。どうやら根っこの部分は無事だったようだ。
「精霊達が頑張ってくれているらしいからね。半年もしたら元通りになるよ」
ディルクさんの言葉にほっとする。やっぱり研究棟には蔓バラが無いとね! 心の中で精霊さん達頑張って! と応援しておく。
そしてディルクさんが扉を開けてくれて、綺麗なドアベルの音を聞きながら研究棟の中に入ると、ニコお爺ちゃんとリクさんが迎え出てくれた。
「ほうほう、ミアちゃん無事で良かったのう。わしゃ心配したぞい」
「ミアさんおかえり〜。元気そうで良かったよ〜」
相変わらず優しい二人に会い、研究棟のメンバーも全員揃った事でランベルト商会に戻って来た事を実感する。
「ありがとうございます……!」
死にかける様な酷い状況だったにも関わらず、こうして無事だった事に私は心から感謝をした。
その後はニコお爺ちゃんとリクさんにマリアンヌを紹介し、会議室に集まって情報交換だ。
そしてマリアンヌがお茶を入れてくれて、一息ついたところでディルクさんが帝国行きの事を教えてくれた。
「僕たちが出発するのは一週間後になる予定だけど、ミアさんの方は大丈夫かな? 陸路を馬車で進んで行くから、帝国の王都まで十日程かかると思うよ」
帝国へ行くメンバーは私とマリアンヌ、マリカとディルクさんに、商会の人が三人と、護衛に飛竜騎士団のモブさん達三人だそうだ。
途中途中で宿をとりつつ、野宿もするそうなのでとても楽しみ!
帝国までの道は人の行き来も多く、かなり整備されているのでこれと言って危険な場所は無いらしい。
「途中に森はあるけれど、魔物が居るような所でもないしね」
話を聞く限りだと、結構快適に過ごせそうなので安心した。途中で盗賊や魔物に襲われたらどうしようと思っていたけれど、そんな事も無いらしい。
「だからと言って油断するつもりは全く無いけどね。今回レオンハルト殿下から派遣された護衛役の三人で十分過ぎるほどの戦力になるだろうし」
ハルが護衛にと言ってくれた飛竜騎士団の人達は、冒険者で言うとAランクレベルなのだそうだ。
うーん、なるほど。それは結構な過剰戦力かも。
「殿下はミアさんが心配でたまらないみたいだね。馬車も提供してくれてね、うちでは大助かりだよ」
何と! ハルが馬車まで!? あの馬車は快適だからとても嬉しい! 十日間も馬車に乗るのが少し心配だったけれど、ハルのおかげで楽しい旅になりそう!
ハルの心遣いが嬉しくて、愛されているって実感が湧いてくる。……ハルに会いたいな。
そんな感じで帝国行きの話は終わり、今度は聖属性の話へ。
「さっき演習場で言っていた聖属性を失くしたのは二回目ってどういう事かな? 差し支えが無ければ教えて欲しいんだけど」
ディルクさんに聞かれ、私はお父様から聞いた、お腹にいた時の話や呪薬の話を簡単に説明する。
「ミアちゃんのお母さんは法国の出身じゃったか……なるほどのう。だったら形見のネックレスは法国で作られたものじゃな」
「え? 帝国で作られたものでは無いのですか?」
形見のネックレスは月輝石で出来ていて、その月輝石は帝国が主な産地だと思っていたから、ニコお爺ちゃんの言葉に驚いた。
「恐らくじゃが、帝国が誕生する前のものじゃろうなぁ。その様に月輝石を加工する技術なんて、今は帝国の禁秘事項じゃし。ワシの兄ぐらいしか同じものは作れんじゃろ」
帝国が建国する前、月輝石の産地となる場所は法国からの圧政に苦しんでいた亜人の国なのだそうだ。
そんな前から存在するなんて……! 月輝石は最も安定した石だから今まで残る事が出来たのかも。
でもお母様はこんな貴重なネックレスをどこで手に入れたのかな……?
「ネックレスの事も謎だけど、ミアさんも謎だらけだよね。胎児の頃から既に聖属性を持っていたなんて……でもいつ復活したんだろう? 殿下に出会った時は既に戻っていたのかな?」
ハルと出会った時……? どうなんだろう……?
「……わかりません。あの時は毎日必死に生きていたから、魔力の事なんて全く意識していなかったので……」
「ユーフェミア様……」
私の言葉に、マリアンヌが痛々しそうな表情になる。
マリアンヌはお母様が亡くなる少し前にお屋敷にやって来たから、私の置かれていた環境の事もよくわかっているのだ。
「……そっか。嫌なことを思い出させてごめんね。でも、前回も今回も聖属性が復活したのは、レオンハルト殿下が関係しているのは確かだろうね」
ハルと初めて逢った日も、昨日の舞踏会の時も、ハルと一緒にいて胸の奥が熱くなったけれど──もしかしてそれが兆候だったのかな? やっぱりそれって、お母様の言う通り……
「愛」
そう、やはりハルを愛したから……って、あれ? マリカ?
「愛の力」
マリカがはっきりと断言した。やっぱりそう言う事なのだろう。
──私はきっと、ハルを愛する事で、聖属性を目覚めさせたのだ。
* * * あとがき * * *
お読みいただきありがとうございました。
前回は更新をすっかり忘れてブッチしました。すみません!
今回も更新するする詐欺をするところでした。(ノ∀`)アチャー
ちなみにサブタイとは違い、あんまり驚いていないような気がしますが、その通りです!(どんっ!)←ワンピース風
サブタイ、毎回悩むのです。そのうち重複すると思います。(おい)
次のお話は
「140 ぬりかべ令嬢、実感する。」です。
いろいろ実感します。(語彙力)
再び近況ノートに書く余裕が無いので、ここでお礼を言わせていただきます。
拙作に☆や♡、フォローいただき真に有難うございます!感謝です!
すごく励みになっております!
いつも応援くださる皆様本当に有難うございます!
お名前覚えてますよ。(ΦωΦ)フフフ…
相変わらず通知が来る度に脳内でお礼を叫んでいるので、そのうちテレパシーを会得できそうです。
突然声が聞こえたらすみません、通報は勘弁して下さい。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
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