41 ぬりかべ令嬢、女子会に参加する。1

 ディルクさんに鑑定してもらったマッサージオイルは化粧水と同じ様にランクを落としたものを作り、問題無いようであれば販売するという事になった。


 販売用のマッサージオイルを作るのは比較的簡単だ。何故ならマリカさんが作ってくれた魔道具を少し改良するだけで作れるからだ。


 一号はハーブを粉砕・撹拌用だからそのまま使えるので、ハーブを煮出す二号に蒸留する為の部品を付けた魔道具を三号とした。

 そして今回開発する四号はじっくり火をかける魔道具だ。キャリアオイルはバターをメインで作る事にしたので、加熱用と浄火用の魔石を設置すれば出来るらしい。

 大体の構成が決まったのでマリカさん指示の元、ニコお爺ちゃんが魔道具を製作中だ。


 これで化粧水に続き、マッサージオイルも魔道具で生産可能となった。このマッサージオイルも売れたら良いな。

 ただ、今は化粧水の販売だけで手一杯なので、マッサージオイルはもう少し環境が整ってからの販売にするらしい。


 そうして再び時間が出来た私は次の商品を考えようとしたのだけれど……何だか最近、マリカさんの様子がおかしい……気がする。何となくだけど元気が無いのだ。

 私で何かお役に立てるのなら喜んで協力させて貰いたいけど、まずは原因を知らないといけない。マリカさん私に教えてくれるかな……?


 当たって砕けろの思いでマリカさんに声を掛けようとした時、ドアベルが鳴ったと思ったら「やほー!」と言って手を振ったアメリアさんが入ってきた。


「こんにちは、ミアちゃん! 今休憩時間なんだけど、この前作ってたマッサージオイルが気になっちゃって……来ちゃった☆」


 テヘッと笑うアメリアさん、とてもキュート! そう言えば「聖膏」はそのまま置いていたんだっけ。正直自分でもどの様な効果があるか興味がある。


「あら? マリカどうしたの? 何だか暗くない?」


 部屋の隅の方でぼんやりと座っていたマリカさんを見たアメリアさんが心配そうに聞いてきた。

 さすがアメリアさん。マリカさんの様子がおかしいのを一目で気付いたようだ。

 私はマリカさんの様子をアメリアさんに話し、一緒に相談に乗ってもらうことにした。するとアメリアさんから提案が。


「明日、三人で女子会しましょう!」


 女子会とは、女性だけで集まるので、男性がいると話しにくい事も気兼ねなく話せたり相談出来たりする宴会の事だそうだ。今回は宴会と言うよりどっちかと言うとパジャマパーティーらしい。


「まあ、女子会って言っても二人共なるべく外に出ないほうが良いでしょう? だから誰かの寮部屋でどうかしら?」


 外に出られないのは残念だけど、女子会楽しそう!

 アメリアさんの部屋には同室者のソフィさんと言う女性がいるそうで、さすがに迷惑だろうと女子会の場所は私の部屋に決定した。

 私の部屋なら同室者は居ないし遠慮無くお喋り出来る。

 ちなみにマリカさんの部屋は一人部屋らしい。部屋でも研究をしているそうで、機密事項も有るからという事で、今まで同室者と一緒に出来なかったそうだ。


 マリカさんも女子会は初めてらしく、とても嬉しそうだ。私もすごく楽しみ! 早く明日にならないかな。




 * * * * * *




 そして女子会の日になった。仕事が終わって準備が出来たら私の部屋に集合だ。

 元々は宴会という事だったので、私は厨房を借りて軽くつまめるような料理を用意することにした。

 メニューはトマトソースのチキンソテー、たことマッシュルームのアヒージョ、ミニカプレーゼ、カルパッチョなどなど。

 トマトソースのチキンソテーはヘルシーな胸肉にトマトやリンゴ酢を使ったソースでさっぱりと。たことマッシュルームのアヒージョはタコとマッシュルーム、赤唐辛子をにんにくとオリーブオイルでじっくりと煮込んで。ミニカプレーゼはミニトマトと小さいモッツアレラチーズにブラックオリーブを調味料と混ぜて……と、お手軽に出来るおつまみをいくつか作った。


 作ったおつまみをテーブルに用意しているとマリカさんとアメリアさんがやって来た。


「わあ! すごく美味しそうなお料理! これ、もしかしてミアさんが作ったの!?」


「美味しそう」


 アメリアさんとマリカさんはすごく喜んでくれた。


「私は飲み物を持って来たけれど、正解だったみたいね」


「デザート」


 二人もそれぞれ手土産を持って来てくれたみたいで、アメリアさんはワインとジュース、マリカさんはフルーツてんこ盛りのジュレ。

 持ってきてくれた手土産もテーブルに並べて準備完了。テーブルの上がすごく賑やかになった。


 そして女子会スタート。

 初めはアメリアさんが仕事中にびっくりした出来事を面白おかしく話してくれたり、今人気の商品を教えてくれたりと、その場を和ませてくれようと色々なお話を、聞いている人も楽しめるように話してくれた。

 私とマリカさんはその話をジュースを飲みながら、時には相槌を打ちながら聞いていた。勿論ワインはアメリアさん専用だ。

 そして話はお店の中で誰と誰がお付き合いしているとかの恋バナへ。


 職場で出逢って付き合って……と言う話を聞き、そう言えばデニスさんとダニエラさんはどうなったのかな、とふと思った。

 傍から見たら相思相愛の二人だったけど、デニスさんデリカシー無いから皆んなの前でプロポーズしていそうだなあ。ダニエラさん怒らせてないかなあ。

 そんな事を考えていたらアメリアさんから質問を投げられた。


「ミアちゃんは付き合ってる人はいるの?」


 いつかは聞かれるだろうな、と思っていたので、ハルのことを簡単に説明した。


「え! 七年も会っていないの? それなのにずっと思い続けているなんて……!! 健気だわ!!」


 アメリアさんに驚かれ、いたく同情してくれた上にぎゅーっと抱きしめられて頭をよしよししてもらった。もしかして酔ってるのかな?」

 ちなみにマリカさんはずっとおつまみを食べている。気に入ってくれたようで嬉しい。


「ミアちゃんは偉いわね……それに比べて私と来たら……」


 何だか今度は自己嫌悪に陥りだした。


「アメリアさんも恋で悩んでいるんですか……?」


 美人で優しくて、明るくて人を気遣えるアメリアさんだけど、同じ様に恋の悩みがあるんだ。


「好きな人がいるんだけど、なかなか言えなくて……」


 頬を染めて恥ずかしそうに呟くアメリアさん。いつもは颯爽とした美人なお姉さんなのに、好きな人について話す姿はすごく可愛い!

 でもアメリアさんが好きな人って誰だろう?


「アメリアさんが好きな人って、ジュリアンさんですか?」


「あ゛?」


 ひえー!! アメリアさんの目が据わってる!! 怖い!!


「どうして私があんなナルシストを好きになるのよ!!」


「す、すみませんー!!」


 アメリアさんは今まで何回か同じ様な勘違いをされて迷惑しているらしい。ジュリアンさんのファンの子たちに問い詰められた事もあるそうだ。……ジュリアンさんのファン……まあ、お店では訛りもないし女性の扱いも慣れてそうだものね。そう思えば確かにモテそうだな。


「じゃあ、私が知っている人ですか……?」


 怒られないように恐る恐る聞いてみると、相手を思い出したのか「……うん」と照れくさそうに答えてくれた。うーん。怒った時とのギャップがすごい。これやっぱり酔ってるよね!?


「私ずっとね、リクが好きなんだぁ」


「え!? リクさん!?」




* * * あとがき * * *


お読みいただきありがとうございます。


アメリアさんの好きな相手が判明です。


次のお話は

「42 ぬりかべ令嬢、女子会に参加する。2」です。


引き続き恋のお悩み相談回ですが、次はマリカさんの番です。

そしてミアがまたもや何かをやらかしそうです。


★や♥、フォローいただいたお礼に、またもや連続更新します。

明日(6/13)9時と19時に1話ずつ投稿します。


どうぞよろしくお願いします!

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