第八話  石板

シャウルがしばらく目をあけたままベッドに横になっているとドアがガチャッと音を立てて開き、ハーナイルが入ってきた。

ハーナイル「夜明けです。そろそろ行きますか?それとももう少し休みますか?」

シャウル「私は十分休みました。おいしいサラダをありがとうございました。」

ハーナイル「行きましょう、こっちです。」

そう言うとハーナイルはシャウルが寝ていた部屋の外に出て、元来た道を引き返し、四階の奥の扉まで出た。

後からシャウルが来るとハーナイルが言った。

ハーナイル「こちらです。」

そう言うとハーナイルはシャウルをエレベーターから最上階の六階の部屋に案内した。六階には左右に一つずつ、奥にもう一つドアがあった。奥のドアには明らかに何かありそうな具合に魔法陣でロックがかけられて、ドアの中心の少し上に緑の宝石の様なものが取り付けられて、ドア全体はきれいな青色に輝いている。

ハーナイル「左のドアです。」

そう言うとハーナイルはシャウルを左のドアの前に案内した。

ドアを開けると部屋の中は縦幅と横幅が狭く、その代わりに天井は高く、高さは五メートルはあり、部屋全体真っ白で正面の壁にたくさんの石板が取り付けられている。

シャウルが正面の壁に向かって歩いていくと石板の手前で透明なバリアの様なものに阻まれた。

ハーナイル「これらの石板は貴重なので目に見えない特殊なバリアが張られています。これが百八の石板です。このジュコイルのあらゆることが記されています。」

シャウル「四十七番目の石板はどれですか?」

シャウルがそう聞くとハーナイルは透明なバリアに手を触れた。すると壁に取り付けられた石板の一つが壁から離れ、ふわふわと宙に浮き、ハーナイルの手に下りてきた。

ハーナイル「これが四十七番目の石板です。」

シャウル「手に取って見てもいいですか?」

ハーナイル「よろしいですよ。どうぞ」

そう言うとハーナイルはシャウルに石板を渡した。シャウルが石板を手に取って見てみるとどうやら縦十文字横十五文字程の文字が書いてあるが、書いてあるのは暗号か何かで読める文字ではなかった。

シャウル「これは暗号ですか?」

ハーナイル「百八の石板は暗号でそれぞれの解読法が異なります。」

シャウル「この石板は解読できているのですか?」

ハーナイル「いいえ。しかしいくつかの石板は解読できています」

シャウル「ちょっと今まで言おうと思っていたことがあるのですが、よろしいですか?」

ハーナイル「いいですよ。言ってください。」

シャウル「実はウボーギルに行く条件の一つである緑玉の指輪と思わしき物を私も持っているのです。」

ハーナイル「興味深い話ですね。もしかするとそれをかざせば解読できるかもしれません。試してみてください。」

ハーナイルの支持通りにシャウルは人差し指に着けた指輪を石板にかざした。しかし石板には何も起こらなかった。

ハーナイル「どうやらこれは緑玉の指輪ではなかったようですね。」

シャウル「ちょっと待ってください、もしかすると」

シャウルはそう言うと指輪に魔力を込め、もう一度石板に指輪をかざすと指輪から緑の光が発生し、石板に掘られた暗号ももそれに呼応するように緑に光り、空気中に青い文字が浮かび上がった。

ハーナイル「これは素晴らしい。」

シャウル「これは暗号が解読できた時の反応ですか?」

ハーナイル「いいえこれは違います。違うだけに興味深い。どうやらこの石板には石板特有の仕掛けがあるようです。」

浮かび上がった文字にはこう書いてあった。


(対の石板は階段の一段目にある。)

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