第七話  不思議な夢

シャウルはまず弓とマントを床に下ろし、イスに深く腰掛け、ため息をつき、目を閉じた。

シャウルは森の賢者で普段はコスローにいるので人間の文明に触れる機会が少ないためミニソファーのあまりの座り心地の良さにそのまま寝てしまった。そしてその時シャウルはまた不思議な夢を見た。

シャウルは薄暗い洞窟の中にいた。しばらく洞窟の中を見ているとシャウルの横をボロボロのフード付きのマントを着て全身を隠し、先端に巨大な緑の宝石が取り付けられた大きな銀色の杖を持ったシャウルと同じくらいの背丈の者が歩いてきた。

その者は一枚の紙きれの様なものを足元に置いた後、杖から光を発生させて照明代わりにし、洞窟の奥へ歩いて行った。

夢は次の場面に変わった。シャウルとあの者は洞窟の出口らしき場所に立っていた。洞窟の外には薄暗い湖が広がり、その中心には小さな島があった。島からは異様な雰囲気が漂っている。突然シャウルの目の前が黒い霧の様なもので覆われた。

シャウルははっと目を覚ました。辺りを見渡したがまだ夢の中ということはなくちゃんとハーナイルに用意してもらった部屋の中にいた。

すると部屋のドアがガチャッと音を立てて開いた。部屋の外からジュコイルの魔術師の格好をした筋肉質で大柄な男性が右手にお盆の上に乗せた食事を持って入ってきた。

男性「ご機嫌よろしゅうシャウル。椅子の座り心地はよろしいですか?」

シャウル「座り心地の良さに思わず寝てしまいました。ところであなたは?」

男性「私はエルギユ、ハーナイル様の付き人です。食事をお持ちしました、代金は結構ですよ。」

シャウル「ありがとうございます。ところで今は昼ですか?それとも夜ですか?」

エルギユ「今は夜明け前です。夜に一度食事をお持ちしたのですが熟睡していたもので。」

シャウル「ご丁寧にありがとうございます。」

エルギユ「では食事は机の上に置いていきます。」

そう言うとエルギユはお盆にのせた食事を机の上に置いて部屋を後にした。

シャウルは久しぶりにぐっすり寝て眠気は引いていたのでベッドにはいかずに食事に目をやった。

食事は大きな一つの皿にカラフルでボリューミーなサラダが乗っている。シャウルは基本植物以外は食べないのでジュコイルの魔術師の配慮をうれしく思い、皿の前に置いてあるフォークを右手に持った。

サラダの味は思いのほか薄く、様々な種類の野菜の噛み心地が良かった。サラダを全て食べきるとちょうどいいくらいに空腹が満たされた。

シャウルは一度落ち着き、先ほど見た夢について考えた。夢で見た場所はおそらくウボーギルの中だろう。そしてシャウルの横を歩いて行ったのは誰かは分からないが地面に手紙を置いて行ったところからおそらくあの者の後に洞窟に入る者に対してメッセージを残したのだろう。そしてシャウルの横を通った者の持っていた杖がユリギエルの失われた杖である可能性は低いがあの特徴的な見た目をハーナイルに説明すればそうかどうか確かめられるだろう。

次にあのウボーギルの出口らしき場所についてだ。ウボーギルへの入り口はミスティアのあらゆる場所にあるのでミスティアのどこかに出たかもしくはウボーギルの中にある空間なのだろう。あの島が何なのかはわからない。


シャウルはこれ以上考えられることはないと思い、ベッドの上に横になった。

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