第五話  暗号

ハーナイルに言われるように中に入ると、そこはジュコイルに置いてあるろうそくの明かりと同じかもう少しオレンジが濃いくらいの色の明かりに照らされた部屋で、床は楕円形で狭く、天井は高く、波のコスローの木(20m)ほどあった。

壁にぐるっと引っ付くように中心が床よりも一回り小さい楕円形に大きく抜けて、抜けた部分から落ちないようにスロープが設置された床が二階、三階と六階まであり、一階の奥には一階から六階まで移動できるダラスで見たようなエレベーターがあった。

ハーナイルはマユイルを待たせてシャウルだけをエレベーターへ乗せた。エレベーターは二階で止まり、エレベーターの外へ出た。合計五つのドアが左右に二つずつ、奥に一つ設置されていてハーナイルはそのうちの左の一つ目のドアをガチャッと開けて言った。

ハーナイル「ここは治療室です。ここにその子犬を置いていくとよいでしょう。」

シャウルが部屋の中に入るとシャウルが知っているベッドとは少し違う六台の大きなベッドが並んでいて、ベッドは四本の支柱で支えられえているのではなくベッドの中心を一本の太い金色の柱で支えられており、掛布団はなく、ベッドの四隅からは金色のくねくねと曲がった金属が中心に向かって伸びている。ハーナイルは一番左のベッドを指さして言った。

ハーナイル「ここに子犬を置いてください。」

シャウルはハーナイルに言われた通りにユミユルを一番左のベッドに寝かせると四隅から延びる金属が伸びてユミユルにくっつき、金属から魔力が送られてボロボロのユミユルの体を癒していった。ベッドの下を見ると大きな金の柱から魔力が伝わってきている。

シャウル「これは寝かせたものを自動的に回復する装置なのですか?」

ハーナイル「ええ、その通りです。どうですか?面白いでしょう?」

シャウル「ジュコイルの建物はエレベーターと言いこのベッドと言いどこからこのような魔力が発生しているのですか?」

ハーナイル「ジュコイルでは自らの魔力を売ることができます。これはジュコイルの魔術師たちから集めた魔力で成り立っています。」

シャウル「それはとても面白いですね。」

ハーナイル「ではそろそろ行きましょう。」

そう言うとハーナイルは二階から直接一階で待たせているマユイルを呼び、三人はハーナイルの案内で二階の一番奥の部屋へ入った。

奥の部屋はオウルの会議室と同じような作りで長い机にいくつもの豪華な椅子が置かれていたが、一つ違うのは長机の中心に大きな水晶玉が置かれているということだ。ハーナイルは一番奥の椅子に座り、シャウルとマユイルはお互いの間を水晶玉にさえぎられる形でそれぞれ奥と手前の真ん中の椅子に座った。

ハーナイル「それでは話を始めますか。」

ハーナイルがそう言うと中央の水晶玉に杖の映像が映った。

ハーナイル「三百年前、我々の先祖は影の勢力の復活をもくろむ破壊神ファボールをユリギエルの失われた杖を使い討伐しました。しかし、ユリギエルの失われた杖はその後名前の通りに何者かによって失われてしまいました。言い伝えによると、ユリギエルの失われた杖はこのミスティア全体をつなぐ地下世界ウボーギルのどこかに隠されているということです。しかし現状では地下世界ウボーギルへの入り口も見つかっていません。」

マユイル「情報が薄すぎます。そもそもユリギエルの失われた杖がウボーギルに隠されているのかもわかりません。」

シャウル「それについての情報は正しいと思います。私の持つ大樹ヨルフの知恵が記載された書物によると(杖は洞窟の暗号を解いた先にある、ジュコイルの聖女だけが暗号を解ける)と書いてあったので杖は巨大な洞窟であるウボーギルにあると思います。問題はどうやってウボーギルに入るかです。」

マユイル「まあ大樹ヨルフの知恵というのであれば間違えなく、森の賢者がそれを知っているのも納得がいきますがその入り口を見つける手掛かりはあるのですか?」

ハーナイル「それについてはジュコイルに伝わる言い伝えの二次創作である童話にウボーギルの入り口の場所を示した暗号が記載されています。まあこれについても本当かどうかはわからないのですが、」

シャウル「それは暗号を解けば分かることです。」

マユイル「ではユリギエルの失われた杖探しの手順としてはまずウボーギルの入り口を示した暗号を解き、ウボーギルの入り口を見つける。次にウボーギルの中に入り、ユリギエルの杖を探す。ウボーギルの中に入れなかったときはまた別の方法を考える。」

シャウル「ウボーギルに入った後は何を手掛かりに杖を探すのですか?」

ハーナイル「あなたの大樹ヨルフの知恵を記したとされる書物には暗号を解いた先に杖があると言っていましたね?おそらく洞窟の中にその暗号があるか、洞窟の入り口を示した暗号の中にユリギエルの杖の場所を示した暗号も一緒に入っているのでしょう」

シャウル「して先ほどから出てくるその暗号とはどのようなものなのですか?」

ハーナイル「そういえばまだあなたには見せていませんでしたね。」

そう言うとハーナイルが中心の水晶玉に手をかざし、水晶玉に古びた紙切れが映った。

紙切れにはこう書かれていた。


(百八の石板は神都市を知る。四十七番目の対となる石板に緑玉の指輪をかざせば石板が地下世界の入り口へいざなう。)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る