第二話 三者会議
王がそう言うと城門がゆっくりと開いた。シャウルはユニユルを紐でそこらへんの鉄の棒にくくりつけ中へ入った。中はひらけた空間で、たくさんの蝋燭に照らされ、目の前には中央の建物へと続く大きな階段が、左右にはそれぞれ左右の建物へと続く通路があり、数十人の魔術師が忙しそうに建物の中を行き来していた。城には常に人の声と足音が蔓延している。いつも静かな森で暮らしているシャウルには頭が痛くなる環境だ。しばらくすると高級そうな緑と黒の服を着た位の高そうな中年の男の人がこちらに近づいてきた。
位の高そうな中年の男「こんにちはシャウル殿、私はミルオース。王に使える魔術師です。」
シャウル「お久しぶりですミルオース。」
実はシャウルはヨルフの命令により、何度かオウルの王宮に来たことがあり、ミルオースのことも知っているのだ。
ミルオース「こちらへ。」
そう言うとミルオースはシャウルを案内するように階段を登って行った。シャウルも同じく階段を登っていくと、二階は大きな広場になっていて、中央に大きなシャンデリアが吊るされシャンデリアの真下には青と黄色で書かれた円形の魔術式のようなものが描かれている。ミルオースはシャウルを広場の左奥へと案内した。広場の左奥には太い通路のようになところがあり、横に約五メートル間隔で三つのドアが並んでいる。ミルオースはそのうちの二つ目の扉を開け、中は会議室のようになっており、大きな長いテーブルに金属製の豪華な椅子がいくつも並んで、机の両橋には一際豪華な椅子がある。
ミルオース「ここに座ってお待ち下さい。」
そう言うとミルオースはシャウル側の一番左の椅子を引き出し、会議室を出て行った。
しばらくすると部屋にオウルの王ともう一人、位の高そうな人が入ってきた。王は何重にも重ねた大きな赤い服を着て、モジャモジャの白い髭と髪を長く伸ばし、右手には先端に青の玉が取り付けられた王の身長よりも少し高いくらいの長い杖を(ガンッ ガンッ)と金属音を立てながらついてゆっくり歩いてきた。もう一人の方は黒色ベースに緑の模様の入ったマントで身を覆い、黒色のモジャモジャの髪と髭は王ほどではないが長く伸びている。頭の上には小さな筒のようなものを乗せて筒からはそれぞれ青、緑、黒の三本の紐のようなツルのようなものを垂れている。王はシャウルから見て左斜め前の机の端の豪華な椅子に座り、もう一人はシャウルの正面に座った。
王「待っていたぞ森の賢者シャウル。前にあったときは小さなガキだったが、前より様になっているではないか。」
シャウル「こんにちはオウルの王ナドーリア。お褒めに預かり光栄です。してそちらの方は誰ですか?」
シャウルがそう聞くとシャウルの正面の人が自己紹介を始めた。
シャウルの正面の人「初めてだなシャウル。私はモーシー。ただのしがない老人の魔術師だ。」
シャウル「あなたがこの国一の魔術師と謳われるあのモーシー様ですか。お会いできて光栄です。」
モーシー「私も一度会いたいと思っていた。」
ナドーリア「さっそく本題に入りたい。ここにいるモーシーの息子パスジルとその一行が海底都市ダラスへ調査へ出た後連絡がつかなくなった。お前に助け出して連れて帰って来てもらいたい」
シャウル「その命令はあなたが私に命ずる前にすでに大樹ヨルフ様より授かっていました。故に元よりそのつもりでございます。しかし大樹ヨルフ様によるとパスジルは私と同等の実力の方だと聞きます。パスジルに付け加え、腕の立つ魔術師数人でもかなわなかった相手に私一人では無理です。」
ナドーリア「そのためにモーシーがここにいる。本来モーシーはオウルにいて欲しいのだが、捕らえられている魔術師たちはこの国の選りすぐり故、この先ファボールと戦う上では必要になるであろう戦力だ。今回はモーシーとお前で行って欲しい。」
シャウル「私は是非モーシー殿とともに行きたいと思います。モーシー殿はよろしいのですか?」
モーシー「私はかまわん。」
モーシーは下を向いたまま口数も少ない。シャウルはモーシーと戦場を共にできることに少し高揚していた。
ナドーリア「よろしい。これで決まりだ。お互いに賛成してくれてよかった。お前に協力してもらう代償として、海底都市ダラスへの行き方については我々の魔道具を貸してやろう。成功のした報酬には金貨十枚をこちらからやろう。お前の持つ神器の元を二個は買える値段だ。報酬はこれで良いか?」
シャウル「その報酬のことなのですが、金貨十枚はいらないのでその代わりに、ファボールを倒すまでパスジルを貸してもらいたいのですが、そちらではダメですか?」
ナドーリア「パスジルはオウルにとっても貴重な戦力だ。加えて海底都市ダラスにいるパスジル一行を捉えている者をモーシー、パスジルと共に倒せば、パスジルを貸してやってもいいだろう。」
シャウル「ありがとうございます。」
ナドーリア「ほかに二人とも言いたいことはあるか?」
シャウル「私からは特にありません」
モーシー「私からもない」
ナドーリア「では二人ともこちらへこい」
そう言うとナドーリアはシャウルとモーシーを会議室の外へ案内した。
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