第九話 偉大なる森の賢者
シャウルはモログの言葉を聞いてぽかんと口を開けた。
「霧に隠された秘宝」の話は人間の街オウルでは有名なシャウルも知っている御伽話だ。だがシャウルも五秒前まで空想の物語だと思っていた。シャウルは話の筋が見えないのでとりあえずモログの話を聞こうと質問した。
シャウル「それはあの有名な物語の話と同じ内容のものですか?」
モログ「霧に隠された秘宝の話が童話になっていることは大樹ヨルフから聞いていましたがあれにはたくさんの二次創作がされています。」
シャウル「本物の話を聞かせてください。」
モログ「ここミスティアは外の世界から隠すために入ったものを惑わす霧に包まれています。私も詳しくは知りませんがこの地には何かが隠されています。」
シャウル「その何かとは霧に隠された秘宝のことですか?」
モログ「霧に隠された秘宝はこの世に確実に存在しますが、おそらく隠すならここ以外のもっと隠しやすいところに隠すでしょう。ここに隠されているのはもっと別のものでしょう。」
シャウル「邪神ファボールと霧に隠された秘宝とはどのような関係があるのですか?」
モログ「十万年の昔から霧に隠された秘宝をめぐり、光の勢力と影の勢力は争いを続けてきましたが、光の勢力の時のリーダーだったソユールにより影の勢力は葬られ、光の勢力も大きな犠牲を払いその姿を消しました。 邪神ファボールとはその時の影の勢力の神の一人で、影の勢力を復活させようとしています。おそらくファボールがこのミスティアを見つけ出し狙っているということは影の勢力を復活させるのに必要な何かがこの地に隠されているという事になるでしょう。このミスティアの地に隠されているものが何かは大樹ヨルフも知りませんでした。」
シャウル「邪神ファボールから影の勢力を復活させる何かを守らなければならない。そういうことですか?」
モログ「その通りです。」
シャウル「三百年前あなたはどうやって邪神ファボールを倒したのですか?」
モログ「邪神ファボールの力は強大で私一人で倒すことは出来ませんでした。邪神ファボールを倒すには二人の人間と協力してやっと倒すことができました。今度はどんな方法でやってくるかわかりません。」
シャウル「敵は邪神ファボールだけですか?」
モログ「いいえ邪神ファボールは強力な三人の手下を持っています。今回もその三人が動いてくるでしょう。」
シャウル「邪神ファボール以外に三人もの強力な手下をあなたとその仲間だけで守ったのですか?」
モログ「邪神ファボール討伐の際に大樹ヨルフとオウルの王の協力無しに成し遂げることは出来ませんでした。私や君よりはるかに知恵と経験で勝る彼らなら、きっと邪神ファボールの策略を見抜いてくれることでしょう。」
シャウルは信用できる仲間がいてくれるであろうことを知り、少し気が楽になった。
モログ「私からの話はこれでおしまいです。何か質問や旅への不安があれば聞きますが何かありますか?」
シャウル「いいえ特にありません。」
シャウルはモログが一瞬少し微笑んだように見えた。
モログ「では、私の役目はこれで終わりです。あなたと話し、成長を見守る時間は大変楽しいものでした。短い時間でしたがこれであなたとはお別れです。私はあなたのことをいつも見守っています。大樹ヨルフにお別れを言い、私はこの世を去ります。」
シャウル「さようなら偉大なる森の賢者モログ。」
モログ「さようならシャウル。」
そういうとモログは緑色に光り、緑の光の粒になり空絵と消えていった。
その日シャウルは四つの神器を持って家に帰り家の中に蓄えてある全てのパンと木の実を袋に詰めて、オーギルを羽織り、大樹の知恵を革の道具で自分に固定してリュックサックのように背中に背負い、ユニユルに手を触れ巨犬になれと念じ、巨犬化させ、ユニユルの右脇に食料、左脇にミトルス(弓矢)をぶら下げ、持てるものは全て持ち、旅の準備を終えた。
第一章 旅の準備編 完
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます