第八話 霧に隠された秘宝

シャウルは自分が風を操ることができた事に対し大いに喜び、次に緑の線を自分の足元に集め上方向に吹けと念じると、座禅を組んだまま少しずつ足とお尻が地面から離れて行く感じがして視界が少しずつ上に上がって行った。どこかのタイミングでバランスを崩し、どさっという音を立てて地面に落ちた。地面に落ちた衝撃で腕輪から両腕が外れ、緑の線は見えなくなっていた。

シャウルは緑の線が見えなくなった後、いつもより感覚が研ぎ澄まされている事に気づいた。

風の音、鳥の鳴き声までよく聞こえる。いつもなら見えないところの微細な動きまでもよく見える。朝からそれなりの魔力を使っているのに疲れを全く感じない。

シャウルは今日の目標は達成したと思い、家の前まで移動した。

時刻はもう夕暮れ時になっていたがまだ何も食べていないので、いつもより多くの夕食を食べて、寝床についた。

次の日、シャウルは夜明け前に目覚めた。研ぎ澄まされていた感覚は元に戻っている。せっかく早起きしたのでオーギルを使いこなせるように練習しようとオーギルを羽織って、開けた草むらへ行き、空中浮遊の練習をしようと腕輪に手を通し昨日よりも多い量の魔力を注ぎ込むと強い風が発生し、風に魔力を送り込むと感覚が研ぎ澄まされて前よりも多い量の緑の線が見えた。シャウルが風にこっちへこいと念じると、風がシャウルの足下へ集まっていき、シャウルのあしもとでうずをまいた。次にシャウルが自分を浮かせと念じると、風がシャウルの体に巻きついて、シャウルの体は高度五メートルまで浮いてその場で空中浮遊した。

ふと下を見るとかなりの高いところにいる事に気づきに怖くなったがすぐに冷静になって風に下に下ろせと念じると、風はゆっくりとシャウルを地面に下ろした。

シャウルはだんだん自分が風を操るのがうまくなってきたことを実感していた。気づくと辺りは朝日に照らされて明るくなっていた。

シャウルは家に戻り、また本とマントを持って例の花畑にワープした。花畑には前の時と同じところにモログがいた。

モログ「こんにちはシャウル、風は操れるようになりましたか?」

シャウル「少し風を操るのに慣れてきました。」

モログ「こんなに早く使えるようになったとは私も驚きです。もしかするとあなたには私以上の才能があるのかもしれません。」

シャウル「では残りの二つの神器と邪神ファボールについての話を聞かせてください。」

モログ「いいでしょう。まず三つ目の神器、(巨犬ユニユル)についてですが、この子は普段はこんな大人しく可愛らしい見た目をしていますが、本来の姿はあなた三人分ほどの巨犬です。あなたが命じれば、この子は恐ろしい巨犬にも可愛らしい子犬にもなります。食事はちゃんと取らせてあげてください。この子はあなたが手を触れて念じれば会話をすることもできます。常にあなたに従いあなたをまもるでしょう。」

シャウルは人の話を聞くのが苦手だが、オーギルを使った影響か感覚が研ぎ澄まされてモログの話がよく頭に入って来ていた。

シャウル「最後の神器はどのようなものなのですか?」

モログ「最後の神器ミトルスは二メートルはある巨大な弓で矢に魔力を込めれば込めるほど威力が上がります。森の賢者としてあなたも弓矢の扱いには慣れているでしょう。少し練習すればあなたなら使いこなすこともできるでしょう。また、この弓矢の矢は一回撃てば弓に魔力を送り込む事でその魔力を弓が吸って矢は自動生成されます。あなたが手強い相手と戦うときに1番の武器になるでしょう。」

シャウル「それで神器の説明は全てですか?」

モログ「神器の説明はこれで全てです。では次に邪神ファボールについてですがその話をするためにはあなたに知ってもらわなければならないことがあります。」

シャウル「何ですか?」


モログ「霧に隠された秘宝とそれをめぐる影と光の戦いの歴史についてのことです。」

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