第七話 オーギル
シャウルは家の中の机の前にワープした。オーギルは椅子の下に、大樹の知恵は机の上にワープした。まずはオーギルを羽織り、大樹の知恵は置いて、家から少し離れた草むらに移動してオーギル(マント)の内側についている腕輪に腕を通し大きく深呼吸してからほんの少し魔力を送り込んだ。するとオーギルの内側から扇子でフワッと仰いだくらいの小さな風が発生してマントがフワッと内側から膨らんでゆっくりユラユラと元に戻った。シャウルは本当に魔力を注ぎ込むだけで風が発生するのか半信半疑だったが、本当に風が発生したことに驚いた。
シャウルは少し面白くなって今度は呪文を使うとき程度の魔力を送り込んだ。
すると「ビュビュッ」と言う音を立ててマントがたなびき、シャウルの髪の毛が上方向に跳ね上がり、あたりに大きな土煙を上げながら、数秒間に渡って強烈な突風が吹いた。シャウルは発生した風の強さを見て、自分が本気でこれを使うとどうなるか察して少し怖気付いた。
次にシャウルは風に魔力を送り込む練習をしようと、もう一度小さな風を発生させて風に向かって魔力を送りこもうとして見たが、風には実態がなくただ空気中に魔力を放出するだけになってしまった。シャウルは大樹ヨルフ様なら風に魔力を送り込むコツを教えてくれるだろうと思い、マントを着たままコスローの大森林へ向かった。木の枝を飛び移っている途中、頭の中にある疑問が出てきた。最近森で問題が起こっていないという事に気づきいたのだ。普通森で問題が起こると大樹ヨルフから通信が来るので、何もないのは良いことではあるなどということを考えながら大樹ヨルフの元へと辿り着いた。よく考えると今は弱っているはずのコスローの大森林の木々たちも指して見た目に変わりはないと思ったが、よく見ると地面にはところどころ落葉がみえる。
シャウル「ヨルフ様。」
ヨルフ「シャウルか。今日はお前のことは呼んでいないが、何用かな?」
シャウル「実は少しヨルフ様に教わりたいことがあるのです。神器を持って例の場所に行き、三百年前の森の賢者モログに神器のうちの一つである「風のマントオーギル」の使い方についてに聞きました。モログの話によるとオーギルから発生した風は直接魔力を送り込むことによって操ることができるそうなのですがやり方がよくわからずヨルフ様ならば知っているのではないかと思いまいりました。」
ヨルフ「シャウル、お前は才能があり賢く強い森の賢者だ。お前なら知っているだろう、魔力を送り込む、または吸い取るときには固体同士でなければできないという事に。」
シャウル「しかし風は空気であり個体ではありません。」
ヨルフ「だがあの風はオーギルから発生した特別な風だ気体でありながら魔力を受け取ることができる個体の性質も合わせ持つ。オーギルから発生した風を気体と思わず個体であるとイメージしながら魔力を送り込むのだ。それが完全にできれば風を操ることができる。」
シャウルはまだヨルフの言っていることがよくわからなかったが、草むらへ行って確かめればわかるだろうと思い、とりあえず納得しひとまず大樹ヨルフの元を去った。
シャウルは再び開けた草むらへ戻り、中央に座禅を組み、目を閉じて、風は個体であるとイメージした。
そして目をつぐったままマントの腕輪に両手を通し、両手を前へ出しながら腕輪に魔力を少しずつ送り込み、発生した風に手を触れ、手にぶつかっているものが個体であるとイメージして石の直方体に魔力を送り込んだときの容量で魔力を送り込むと次の瞬間、自身の体が空気と一体になった感覚がして、目を開けると風が緑の線のように可視化できた。
線に向かって右に動けと念じると、右方向に向かって「ヒューっ」と耳をかすめるように風が吹いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます