第二話 脅威

シャウルは予感のするところに辿り着いた。

コスローの大森林で最も古く最も高い大樹ヨルフの立っている場所だ。

大樹ヨルフとはコスローの守護神のような存在でコスローの大森林の力の源だ。

背丈は雲の上まで続き枝からは金色のツルが垂れ青緑の木の実がなる神秘的な樹

木だ。

大樹ヨルフは樹木だが意思があり、不思議な魔法のようなものも自らの意思によ

って使うことができる。未来を見通す、木に生命力を流すなどだ。

今日の朝から感じていた予感は大樹ヨルフから流されていたテレパシーのような

ものではないかシャウルは思った。

ヨルフ「シャウルか」

シャウル「ヨルフ様」

ヨルフ「朝から嫌な予感を感じていただろう。あれは私がお前をここにこさせる

ためにお前に送ったテレパシーだ。無理やりこさせてすまない。お前に急遽伝え

たいことがある」

シャウルは少しむっとしながら言った。

シャウル「それテレパシーで伝えられないんですか?」

ヨルフ「いやまあ可動範囲というやつだな」

シャウル「それで何でしょう?」

ヨルフ「この森の木々達はそこらの山や森の木の丈夫さを遥かに凌ぐ。コスロー

史上この森の木がこんなに弱ったのは今回と300年前、森の賢者がモログだった

時くらいだ。放っておけばあと二年でこの森の木々は枯れ果てるだろう。」

シャウルは今の今まで早くご飯を食べタイだとかもうちょっと寝たかったとか思っていたがヨルフが唐突にとんでもないことを言い出したおかげで頭がフリーズして、その後こう言った

シャウル「マジすか」

ヨルフが続ける

ヨルフ「かつての森の賢者モログはこの危機から森を守った。今まさにあの時森を襲った災害の歴史が繰り返されようとしている。」

シャウル「この森を弱らせているのは何なのですか?」

ヨルフ「三百年前、この森を襲ったのはこの森が生まれる遥か昔から存在してい

る古の邪神だ。」

シャウル「その邪神は何という名前なのですか?」

ヨルフ「その邪神の名は   ファボール  」

シャウル「 ファボール 」

シャウル「それで古の邪神ファボールとはどれほどの力を持っているのですか。」

ヨルフ「お前一人では到底太刀打ちできない。少なくともお前クラスの戦

士がもう二人は必要だ。」

シャウルはこの時のヨルフの言い方で一気にブルーな気持ちになった。

シャウル「え?私戦うんですか?」

ヨルフ「他に誰がいる?」

シャウル「なるほど。つまり仲間を集めファボールの居場所を突き止め討伐せよと言うことですか?」

ヨルフ「その通りだ。」

シャウル「それで、具体的に何をすればよろしいのですか?」

ヨルフ「まずは仲間を集めるのだ。最低でも今からお前に二人仲間にして欲しいも

のがいる。」

シャウル「それは誰ですか?」

ヨルフ「今から見せてやろう。」

そう言うとヨルフは枝から伸びている金色のツルの一本をシャウルの額に当てた。

途端にシャウルの頭の中にヨルフのイメージが伝わり頭の中にフラッシュバック

した。


フラッシュバックに移ったのは光も届かないような深い海の底だった。

あたりを見渡すが何も見えない。途端に大樹ヨルフの声が聞こえてくる。

ヨルフ「ここは大海アルンの海底だ。」

周りに何も見えないのでシャウルは試しに右手を前に出し呪文を唱えてみた。

シャウル「エトール (照らせ) 」

そう唱えるとシャウルの右手がら発光する玉が現れプカプカ宙に浮いてあたりを

照らした。

ヨルフ「ここは私のイメージだ。呪文を使おうと思えば使うこともできる。右

を見てみろ。」

そう言われて右を見ると微かに大きな半円のようなものが見える。

シャウル「巨大な半円のようなものが見えます。」

ヨルフ「あれはバリアだ。水を防ぎ中に空気を入れ人が住めるようにしている。

あの中には今は廃墟となった海底都市ダラスがある。かつてファボールはダラス

を乗っ取りそこを拠点として三つの地域を襲ってきた。」

シャウル「では海底都市ダラスに一人目の仲間がいるのですか?」

ヨルフ「その通りだ。だが状況は少し厄介になっている。一人目の仲間はダラス

で待っていると言うよりダラスに囚われているのだ。」

シャウル「どう言う意味です?」

ヨルフ「一人目の仲間は魔術師の街オウルの人間で、オウル随一の魔術師で王の

側近の一人であるモーシーの息子のパスジルなのだ。ファボールの復活を予見し

ていたモーシーはオウルの王にその事を伝えると、王はファボールが前回拠点に

していた手がかりを得るために、海底都市ダラスに偵察隊を編成し調査に向かわ

せた。その偵察隊の隊長が」

シャウル「パスジルだったと。」

ヨルフ「その通りだ。今パスジルはおそらくファボールの力によってダラスに捕

らえられている。まずはパスジルをダラスから救い出し仲間にして私の前へ連れ

てくるのだ。」

シャウルはファーストミッションのあまりの重さに私は死ぬのか?と思った。

シャウル「かしこまりました。」

ヨルフ「大体の話は終わったがもしもお前はヘマをして死なれでもしたら変わり

が効かない、これはお前がもう少し成長してからやろうと思っていたがお前の護

身のためだこれを受け取れ。」

そう言うと大樹ヨルフはシャウルに緑透明の玉のような物が付いた指輪を与えた。

ヨルフ「これをコスローの四つの神器の前に持って行けお前なら神器も使いこな

せる」

シャウル「では神器を手に入れたのち早急にパスジルの奪還に向かってまいりま

す。」

ヨルフ「話はこれで全てだ」

シャウル「ではこれで」

そう言い残しシャウルがその場をさろうとした時大樹ヨルフの葉が一枚枯れ落ち

たのを見てシャウルは自分の中で朝感じた予感がこれから出る旅への不安にかわ

っていることを実感した。


同じ頃  海底都市ダラスで


謎の声「もう一度聞くぞ私の武器は何処にある?」


パスジル「死んでも教えない」

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