第一章 旅の準備編
第一話 異変
前書き
西には十五メートルを超える丈夫な木々が並ぶ広大な森に摩訶不思議な姿の動物たちが暮らすコスローの大森林。
東には魔術を使う人間達によって大きく発展した文明を持つ魔術師の街オウル。
南にはその二つを合わせても足りない程広大な青色と静寂の広がる大海アルン。
そしてこの三つの地域の周囲を深い霧が外の世界の謎を隠すように包み込む霧に閉ざされた世界ミスティア。
この物語の小さな主人公は深い霧の先に隠された大きな謎を知ることになる。
始まりはいつでも小さな事件から。
第1話 異変
森の賢者シャウルはその日の朝起きた時嫌な予感を感じた。直感でコスローの大
森林に何かあったとわかるのだ。森の賢者とは代々コスローの大森林を守る役に
ついている人間だが、大樹ヨルフによって動物と会話できる、木々の持つ魔力を
扱えるなどコスローの不思議な力を与えられている。
シャウルは小柄だが運動神経は良く、賢者の力以外に人間の魔術もつかえる、髪
は金色で長くいつも緑のマントを羽織っている。
シャウルはいつもなら朝食を取るところだが異常事態を察し小さな木の実を三つ
口に入れ、家を飛び出した。
シャウルの家はコスローの大森林の外れにあり中心部に行くには少々時間がかか
る。
しばらく全速力で走ると高い木々の並ぶ森が見えてきた。コスローの大森林だ。
コスローの大森林に入るとヒョイッと十五メートル級の木に登り、丈夫な枝を飛
び移りながら、予感のする方へ向かった。
予感のする方へ向かう途中どこからか「ヴェー」と動物の悲鳴が聞こえた。
仕方なくシャウルは方向転換して悲鳴のする方へ向かった。しばらくすると、大量
の鹿が集まっていた。普通群を作らない鹿がこんなになるのは不自然だと思い大群
の中心へ向かった。大群の中心にはコスローの木が倒れその下敷きになった一頭の
鹿がいた。
シャウル「何があった」
鹿「急にこの木が倒れてきて」
シャウル「大丈夫だ今助けてやる」
そう言うとシャウルは倒れた木を両手で持ち上げ、シカの横に転がした。次にシャウル地面に正座し、鹿に手を触れた。するとシャウルの手が緑に発行し、シカの体内にシャウルの魔力が流れ込んでいった。シカの傷はみるみる回復し、最終的には鹿が立てるまでになった。
鹿「これは、」
シャウル「コスローの魔力です。この森の物であればどんなものも治せます。」
次にシャウルは横に転がした木を運び土のえぐれているところに木の根っこを当て木を立たせて、左手で木を支え、右手で木の根っこに触れ、鹿と同じように魔力を送り込み根を土の中に張らせて、周りの土を木の根っこにかぶせて元に戻した。
鹿「ありがとうございます」
シャウル「また何かあったら呼んでください」
そう言ってまた予感のする方へ向かおうとした時シャウルは今起こったことがとん
でもないことだと言うことに気づいた。
コスローの大森林の丈夫な木が根っこから抜けて倒れるなんてことはコスロー史上
一度もなかったのだ。
益々シャウルは枝を飛び移りながら速度を増し、予感のする方へ向かった。
途中飛び移った枝の一本がミシッと音を立てもろくなっていることにシャウルはさ
らに焦った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます