霧の異世界物語(ミスティアストーリー)
ピーター@16歳ニート
プロローグ 戦争
光と影の戦いの歴史は十万年の昔から続き、その物語の中心には常に「霧に隠された秘宝」がある。
「霧に隠された秘宝」とは何なのか、どんな力を持っているのかについては深い霧に隠されているということと、光の勢力によって守り続けられているということ以外、古の神々でさえ知るものは少ないが常に光と影は「霧に隠された秘宝」をめぐり戦い続けてきた。戦いの度に光は影から「霧に隠された秘宝」を守り、また光も「霧に隠された秘宝」を悪用しようとはしなかった。
「霧に隠された秘宝」はその時代ごとにあらゆる名前で呼ばれてきたがちょうどそれが「キユイル」と呼ばれていた時代のある満月の夜、その出来事は起こった。
満月の夜。虫たちが泣き、涼しい風が荒野を流れる中、不思議と荒野のすみに大量の霧が立ち込める場所がる。
その霧の立ち込める場所へ荒野の中をゆっくりと歩いていく一つの巨大な黒い影があった。
影は一歩ずつ荒野の中を歩きながら霧の立ち込める場所に近ずいていく。しばらく歩くと影は霧の立ち込める場所の真ん前まで来た。と次の瞬間、影はノソッと動き、体を大きく前に乗り出し、霧の中に自身の体ごと入っていった。
影は霧の中でほのかに一筋の光を見た。その光が一体何なのかはわからないが陰にはそれがキユイル(霧に隠された秘宝)であることがはっきりと分かった。
影が低い声でつぶやいた。
「あれが噂に聞くキユイル。実在しているのか半信半疑だったが光の神の言っていたことは事実だったか。」
そう言うと影は深い霧の中に差す一筋の光を頼りにキユイルへ近づいていった。
影がキユイルを目指し、しばらく霧の中を進むと突然霧を抜け、月光が刺す広い荒野へ出た。かすかに吹く風に草木が揺れ、虫と風の音がする。空は雲一つなく大きな満月が荒野を見下ろしている。不思議なことに荒野には風が吹いているのに霧は荒野の中には流れてこない。荒野の中心には一筋の光を放つキユイルがあった。影は尚もキユイルの方へ歩いてゆく。
荒野は思っていたよりも広く、歩いても歩いてもキユイルに近ずいている感じがしない。
影の足が少し疲れてきたころ、ついに影はキユイルのある場所についた。
キユイルの見た目は荒野の中央にあった棺ほどの大きな箱だった。
影はまとっていた大きな影のローブを脱ぎ捨ててその姿を見せた。顔は真っ黒で目が赤く白い髪と髭は長く伸びている。
額からは左右に大きな悪魔のようなツノがはえ、ミイラのように痩せ細った黒い腕が肩から四本ある。
影が四本の手で箱の蓋を動かそうという時、影は何者かの気配を感じ取り、手を止め右斜め後ろにその赤い目をやった。
視界の先には五つの金色の鈴をつけた長い杖を(シャリン シャリン)と鳴らしながら影と同じくらいの背丈の者が歩いてくる。
その者の姿と形は腕は二本、足も二本、眼は金色のガラスのような大きな眼で大きな青い服を着ている、腰には金色の長い剣と青色の短剣を指している。額には大きな青いビー玉のような眼があり、髪はもじゃもじゃの黒髪で全体的に細身で影とは対照的見た目の者だ。
影はその者に低い声で問いかける。
オーズ「ソユール、光の神であるお前がなぜ今こんなところにいる」
ソユール「私の使いからあなたが不穏な動きをしていると言う報告があったのですよ。」
オーズ「何をしに来た。」
ソユール「その箱を開けるのを止めにきたのです。」
オーズ「キユイルとは何なのだ?」
ソユール「私も何なのかわかりませんがとてつもない影の力を感じます。それを影の神であるあなたに渡せば何かとんでもないことが起きますオーズ、その箱から離れなさい」
オーズ「お前との長い戦いを終わらせることができるのなら喜んで開けよう」
そう言って棺の蓋を開けようとするとソユールが杖から光の玉のような者を放ち、それをオーズにぶつけ、オーズは光の玉を紫色のバリアで防御し、土煙が立った。
ソユール「もう引き返しなさい。私が来た以上霧に隠された秘宝を奪うのは不可能です。」
オーズ「果たしてそうかな?」
そう言うとオーズが右手を空に向けて紫色の花火を打ち上げると突然荒野に地響きがした。
地響きは次第に大きくなりながら荒野全体に鳴り響いている。
しばらくするとポツポツと黒い小さな点が霧の中から出てきた。
黒い点は少しづつ増えて行くとソユールはその点の正体に気づいた。
影の勢力の魔物だ。魔物たちの列は途切れることなく霧の中から現れ続け地響きが鳴りやむころには
影の勢力の魔物は全員が黒色という以外には特に共通点はなく巨大な狼に乗って、片手で長い剣を持った全身黒色に赤い模様の入った大男や巨大な蛇の頭部分に椅子を取り付け、その上乗っている大きなフードをかぶった小柄な者、足元から触手の様なものを発生させる魔術師など様々な見た目の者がいる。魔物の軍勢は荒野の中に大きく十個に分かれ、それぞれの軍勢の先頭には飛び切り強烈なオーラを放つ十人の影の勢力の神々が立った。
オーズ「これならどうだ?」
ソユール「まさかあなたがそこまでやるとは思いませんでした。」
オーズ「ではおとなしく引き返せば・・・」
ソユール「なので念のためにつれてきておいてよかったです。」
ソユールがオーズを遮って言った。
オーズ「まだ何かあるのかな?」
ソユール「ええもちろん。」
そう言うとソユールが腰に差した青い短剣を抜き、空に掲げた。短剣の刃は月光に照らされエメラルドの様な濃い緑色に光っていた。短剣の刃から緑の光が発生し、空に一本の緑色の光の線が上がった。すると、空から今までどこに隠れていたのかというくらいの数の光の軍勢が一人、また一人と荒野に降り立ってきた。
光りの軍勢は全員が空から荒野に入ってくるが、全員が白い翼を持っているわけではなく巨大な鳥に乗っているものや二頭のペガサスに引かれた屋根の無い馬車に乗っているものもいる。光の軍勢も十個の軍勢に分かれて荒野に布陣し、それぞれの軍勢の先頭には十人の光の勢力の神が立った。
オーズ「そんな数の光の軍勢を一体どこに隠していた?」
ソユール「霧の裏側に。」
オーズ「まさか光の神がそこまで用意周到だったとは。」
ソユール「最後の警告です。引き返しなさい。お互いに破滅しますよ?」
オーズ「構わん。」
オーズがそう言うと荒野に一瞬の沈黙が流れ、次の瞬間、オーズが荒野全体に響き渡るような大きな声で叫んだ。
オーズ「かかれー」
オーズがそう言うと影の勢力の軍勢が一斉に光の勢力の方へ向かって走り出した。
負けじとソユールも腰に差した金色の剣をさやごと抜き取り、空に掲げて叫んだ。
ソユール「かかれー」
ソユールがそう言うと光の勢力も影の勢力と同じように走り出した。
二つの勢力は中央でぶつかり、月光のさす静かな荒野は悲鳴と血の海になった。
キユイルをめぐる戦争は二週間もの間続き、ソユールとオーズはお互いに致命傷をおいながらも互いがはてるまで戦い続けた。その後二人の神はどうなったのかは誰も知らない。
光の勢力と影の勢力の全戦力をかけて行われた戦争によりその大半が滅亡し、光の勢力と影の勢力は互いにその姿を消し、霧に隠された秘宝をめぐる戦いの歴史の終わりがついに来たかに見えた。
そしてソユール率いる光の勢力とオーズ率いる影の勢力の話が伝説となった頃、キユイルをめぐる物語は
再び始まりの鐘を鳴らす。
物語は霧に囲まれた三つの地域から始まる。
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