1章-3

「何してたの?」

彼女がそう問う。鼓動はまだ速く、呼吸も荒い。僕は答えに詰まり、

「君こそなんでここにいんだよ。」

とぶっきらぼうに聞き返す。すると彼女はその白い肌に笑みを浮かべ、近づいてくる。僕は反射的に後ろに下がる。僕の体とぶつかり網格子が高い金属音を響かせる。

「清水くん、死のうとしてたでしょ?」

彼女は笑顔でそう僕に言う。一瞬何のことか分からなくなり、力が抜ける。

そうか、僕は死のうとしていたのか。そこで初めてどうしてこの屋上から地面を見つめていたのか理解した。

惹かれていたのだ。死に。

飛び降りた先にある、死に。

そのことに気付き、呆然としている僕に彼女は先程と変わらない笑顔で言う。

「ねえ、いっしょに死んでみない?」


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