1章-2
突然、ズボンの右ポケットに入れたスマホが僕の足を揺らす。スマホを取り出して画面に目をやる。他校に進学した同じ中学の同級生がSNSを更新したようだ。SNSを開いてみるとそこには元同級生とその友人達が海で遊ぶ写真が上げられている。太陽に照らされた砂浜。ダイヤモンドのように光を跳ね返す海面。そして、楽しそうに笑いあう日に焼けた元同級生たち。
思わず、スマホの電源を落とす。嫉妬、羨望、憧れ。色んな感情が僕の中から湧き出す。
思い返せば中学の頃、高校は憧れの場所だった。友達と学校帰りに買い食いをして、他愛もない話をし、休みの日にはカラオケやボーリングをして笑い合う。そんな高校生活が送れるのだと思っていた。けれど、今の自分は違う。クラスメイトとは挨拶すら交わさず、ただ卒業するまで同じ教室にいるだけの関係。最近、嬉しかったことを思い出せば、模試の結果以外思い浮かばない。
このまま、大学へ進学しても4年間就職のために待ち続け、就職しても定年まで待ち続け、定年したら死を待ち続ける。そんな考えが頭を過ぎる。怖い。そう感じた。
ふと、後ろを振り返る。ここは4階建て校舎の屋上。真下はコンクリート。落ちたらまず助からないだろう。なのになぜだろう、この高さ2mの網格子を越えた先にあるのが楽園のように思えてしまう。
残りの人生を待ち続け、待ち続け終えていく。それならいっそ、ここから飛び降りれば、断ち切れる。救われる。そんな考えが頭の中を巡り続ける。
セミの声が鼓膜を揺らし頭の中で反響する。
赤い太陽が額に照りつけ、汗がそこをつたう。呼吸が荒れる。鼓動が速まる。
「清水くん?」
突然後ろから声をかけられ、咄嗟に振り向く。そこには雪のように白く透き通った肌の黒髪の女子生徒が立っていた。
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