第12回「ズレ」
「え?ちょっと待って、今の話のどこが面白かったのかわからないんだけど…」
私は雑談中にみんなが笑ったことが理解できなくて思わずそう聞いていた。
「また出た。ありさ(仮名)のズレ。」
ありさとは、私のことだ。
私は友達からよく感覚がズレていると言われる。
みんなで話しているときに笑うポイントが私だけおかしかったり、可愛いと思うものがみんなと少し違っていたり、私には自覚はないが色々なことがほんの少しだけズレているらしい。
そして、あの時も私はズレていたらしい。
それは一昨年、中2の社会科の校外学習で鎌倉に行ったときのこと。
校外学習とは言うものの、各自5~6人の班に分かれ、学校の最寄り駅と帰りの鎌倉駅での点呼をする以外は、先生なしで寺や神社などを回るという観光みたいなもので、私は寺や神社に興味があったので楽しくて仕方がなかった。
午後に少しマイナーな神社に行ったときにそれは起きた。
「ね?ね?…あの人ヤバくね?」
「ん?何が?つか今手水してるから。」
私が参拝の作法ある手水をしている途中で親友のリナ(仮名)が横やりを入れてきた。
「ごめんごめん…ほら、あの人。」
リナはごめんと言いながらも謝っている感じはなく、そんなことよりもあれを見ろという感じだった。
「んー?ぜんぜおかしくないじゃん?」
「いやいやいや、よく見てみ?…ほら、みんなもちょっとあの人見てみ?」
そう言って指差したのは、私達がいる神社から20~30メートルくらい離れたところに立っている女の人だった。
私は何の異常も感じなかったが、その時の私を除いた班のメンバー5人全員がアレはおかしいと言って女の人に聞こえないように声を抑えながら騒ぎだした。
「…ちょっとリナ、何がおかしいか教えてよ。また私だけ置いてかれてんだけど。」
さすがに私だけがわからないというのは気になるのでリナに聞いてみた。
「ありさまたか。いやだからよく見てみ?絶対わかるから…」
「いやさっきも見たし。」
そう言いつつももう一度私は女の人をよく見てみた。
が、やはり異常は感じなかった。
「……わかんない。」
「はぁ~…ありさは仕方ねえなあ…説明するから聞けな?…あの人、さっきからあそこでクルクル回ってんだろ?」
「はぁ?そんだけ?」
そう言われてみると、その女の人はその場でクルクルと回っているように見えた。
けど、やはり異常とまでは言えなかった。
「別に回っててもよくない?回ってたら異常なの?ダンスの練習中かもよ?」
「ちげーし、ありさ。つか最後まで聞けな?フツーは回れば前後が入れ替わるだろ?あの人よく見てみ?」
「また見んの?」
私はもう一度女の人を見た。
するとクルクルと回っているように見える女の人は、回っているにも関わらず常に顔側だけがずっとこっちに向いていた。
「なにあれ気持ち悪っ!」
「な?ヤベーっしょ?」
「ねえ、気持ち悪いからもう次いこ?」
私とリナが話していると班長のアヤ(仮名)がそう言った。
いつもはこういうことに対して私ら女子をからかう男子2人もさすがに気持ちが悪かったらしく、それに従った。
その日、そのあとは何もなく解散し、夜にリナとアヤと私の三人でLI○E中にそれは発覚した。
リナとアヤは、回っていた女の人はずっと後頭部側だけが見えていたといい、男子達にも確認すると同じ答えが帰ってきた。
あの女性が何だったのか、そもそも人だったのかどうかもわからないけど、私だけが顔側を見ていたらしい。
どうやら、私はこんなことでもズレていたらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます