第4回「アタシの家」

 アタシの家には見知らぬ家族が住んでいる…




 おかしな話をするみたいだけど、アタシの住む家には見知らぬ家族がいて平然と暮らしている。

 その家族は四人家族で、オトウサン、オカアサンと呼ばれている大人が二人、ミツキチャン、シホチャンと呼ばれている女の子が二人、合わせて四人。

 恐らく、オトウサンは父親で、オカアサンは母親で、二人の女の子はその子供たちなのだろう…


 アタシが彼らの存在に気がついたのは引っ越してきた直後のこと。

 引っ越してきて早々、四人がどたばたと騒がしく動き回る音や話声が聞こえたので直ぐにわかった。

 引っ越してきた日の翌日には、四人はアタシのことなど無視して食事をしたり、お風呂に入ったり、平然と生活をし始めた。


 あの人たちはいったいなんなのだろう?


 勝手にアタシの家に住み、アタシの家で生活をしている…

 彼らにはアタシの声も届かないし、触ることもできない。

 アタシはこのまま彼らと暮らすしかないのだろうか?

 アタシ、耐えられるかな…

 出来ることなら彼らには早くアタシの家から出ていって欲しい。



 引っ越してから四日が過ぎた。


 あの家族は相変わらずここに暮らしている。

 出ていって欲しい…



 引っ越してから十四日が過ぎた。


 まだいる…早く出ていって欲しい…



 引っ越してから二十四日が過ぎた。


 出ていけ!ここはアタシの家だ!早く出ていけ!



 引っ越してから四十二日が過ぎた。


 出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!アタシの家だ!アタシの家だ!アタシの家だ!アタシの家だ!



 引っ越してから四十四日が過ぎた。


 良かった…どうやら彼らはやっとアタシのことに気がついたらしい。

 これで出ていってくれる。

 やっと安心して暮らせる。



 引っ越してから四十九日が過ぎた。


 ふざけるな!早く出てけ!ここはアタシの家だ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!出てけ!



 それからまた四日が過ぎた。


 良かった…出ていった。



 さらに四日が過ぎた。


 ふざけるな!今度は一度も見たことのないババアを連れてきやがった!なんなの!せっかく静かになったのに!出ていったんじゃなかったの!どうして欲しいの!アタシの家に勝手に上がり込んで!


 その日…アタシは、彼らの口から恐ろしい言葉を聞いてしまった…


「シモヤマさん、どうですか?どうにか出来ませんかね?」


 こいつら、あろうことか見知らぬババアと手を組んでアタシの家からアタシを追い出そうとしているようだ…


 ふざけるな!ふざけるな!ふざけるな!ふざけるな!なんでアタシが追い出されなきゃならないんだ!出ていくのはそっちだろ!アタシの家だ!アタシの家だ!アタシの家だ!アタシの家だ!


 ………許さない。


 許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない。



 ゼッタイニユルサナイ



 それから四日後、また奴等が来た。


 ザマーミロ!

 あのシモヤマとか言うババアはあの日の帰りに事故に遭ったらしい。

 ちゃんと死んだかな?

 今日は見たことがないやつが四人も来たけど、どうせこいつらとも二度と会うことはない。



 ココハアタシノイエダ


 ダレニモワタサナイ





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