第2回「箪笥」
私の部屋には子供の頃から使っている箪笥があります。
その箪笥は木製6段式の箪笥で、一番上の引き出しだけ左右に別れているというごく普通のデザインです。
私が13歳のときに亡くなった祖父が私の小学校入学に合わせて「これからはお前も自分で服を選んで着るんだぞ」と言って私のために用意してくれたものです。
当時の私はまだ幼かったのですが、突然手に入った自分専用の箪笥に大喜びした記憶があります。
それから、この箪笥の周りで不思議なことが起こり始めました。
その箪笥が我が家に来てから半年ほどたったときのこと。
いつものように父が仕事に行き、私が学校に行っているときにそれは始まりました。
母が私の部屋を掃除するときや洗濯物を部屋に置きに行くとき、ふと気がつくと箪笥の一番上の左側の引き出しだけが開いていたということが度々あったらしいのです。
この時、母はてっきり子供の私が閉め忘れていただけだと思い気にも止めなかったようです。
そのようなことが続いたある日の朝、私が起きるとその一番上の左側の引き出しが床に落ちていました。
同時に窓際に置いてあった花瓶も一緒に転がってしまい、引き出しに入っていた靴下が水浸しになり大騒ぎになりました。
その騒ぎのせいで私はその日は学校に遅刻しました。
それから数日後、その日のその時間に私がいつも使っている通学路で居眠り運転による事故が起きていたと知りました。
幸い、誰も巻き込まれた人はなく、運転手も無事だったらしいのですが、もし箪笥の引き出しが落ちずにいつも通り学校に行っていたらと、母は今でも話しています。
これがこの箪笥に関わる一番古い出来事です。
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