第2章 ラブコメには意外とバトル展開が多い

第15話 高校生活や日常生活で起こるラブコメ的な展開を回避するために、日頃からラブコメを研究しながら対策を講じて、適切に対処するための術を学ぶことが目的のとても健全な部活動(謎)

  アンチラブコメ倶楽部という謎の部活に強制入部させられてから一週間が経った。


 その期間でやった活動といえば、ひたすら部室でだべってラノベを読む。マジでそれだけ。

 桜宮は優雅に紅茶とか飲みながら無表情でラノベを読んでるし、水原は常に退屈そうにスマホをいじりながらビッチな表紙のファッション雑誌を読んでるし、百合ヶ崎は部屋の隅でノートPCをポチポチしながら熱心に某有名海賊マンガのBL本を読んでいる。もう完全にカオスだった。

 つーか、後半の二人とかラノベ読んでねぇから。この空間でラノベ読んでいるのは俺と桜宮だけという惨状。


 どう考えてもまともな部活動ではないわけだが、そんな我々の活動内容は『高校生活や日常生活で起こるラブコメ的な展開を回避するために、日頃からラブコメを研究しながら対策を講じて、適切に対処するための術を学ぶことが目的のとても健全な部活動よ』と聞いている。ちなみに桜宮部長の説明を原文そのままだ。


 とても大事なことなのでもう一度だけ説明しておこう。


 我々の主な活動内容は『ラブコメを回避するためにラブコメを研究してその対処方法を学ぶこと』である。


 そして、俺はあえてラブコメなシチュエーションを発生させるために非人道的な方法で入部させられた哀れな小羊。いや、実際は小羊の皮を被った狼だ。孤高の存在。一匹狼な花村さん。


 群れない。

 媚びない。

 友達いない。

 キャー素敵。抱いてー。

 

 そんなことより俺が入部してやったのにラブコメ的なイベントが一回も発生しないとかどういうことだろうか。放課後の部室にイケメンが一人と女子高生が三人だよ。ハーレムビートだよ。女子はイケメンがいるだけでキャッキャウハウハするはずなのに。おそらく俺氏がイケメンすぎて遠慮してる可能性があるな。

 

 そもそも俺が入部する必要は微塵もなかったと思われるのだが、そこら辺を親切に指摘してあげると桜宮部長はいつも冷えきった視線を向けてからスルーしやがる。その態度ですべて解決するとこがさすがは唯我独尊の桜宮小春だ。実際、あのドライアイスみたいな目で睨まれるとマジで鳥肌が立つから。あいつなんなの。もしかして雪女か? さっさと雪山に帰ってくれないかな。


 しかしまあ、残念ながらデメリットばかりではないのもまた事実。

 部室の中は空調が効いて快適だし、部費で購入された飲み物とお菓子は勝手に飲み食いしていいというまさかの好条件。誰一人として真面目に活動している様子はうかがえないから気分はまさに放課後ティータイム。ノリと勢いで軽音部にシフトしちゃってもなんら支障はない。

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