第7話 本気と書いてガチ
「どう? 答えは出たかしら?」
「丁重にお断りさせていただきます」
「あらら。本気なの?」
「本気と書いてガチだ」
本気と書いてマジともいう。立原あゆみ先生的な言葉遊び。
「残念だわ。君なら入部してくれると思ったのだけど」
とか言っているくせに、桜宮の表情からは
「……そろそろ帰ってもいいか?」
「ええ。もちろんよ。わざわざ時間を取らせてしまって悪かったわね」
そう言ったきり、桜宮は本棚から一冊抜き取って読書をはじめてしまった。
どうやら本当に帰っていいみたいですね。なんとも微妙な雰囲気だが、このまま部室に残ってたらまたロクでもないことを言われそうなので、ここは桜宮先輩のお言葉に甘えてドロンさせていただくとしよう。つまりは三十六計ドロンに
再び踵を返して入口に向かう。今度は桜宮に肩を掴まれるようなこともない。
若干の後ろめたさを感じながらドアノブに手をかけると、背後から水原の冷やかな声が聞こえてきた。
「あんたさぁ……ホントうぜぇのな。ウチら完全に時間の無駄だったし」
「はあ? お前、途中からスマホいじってヒマそうにしてたじゃねぇか」
「つーかさ、わざわざウチらがお願いしてるのに断るとかバカじゃね?」
「知るかバカ野郎。俺は自由をこよなく愛する自由人HEROなんだよ」
個人的にはパプワくんもオススメ。
「意味分かんないこと言って
水原はやっぱりイラついていた。お前、カルシウム足りなすぎじゃね?
「うるせぇな。別に逃げてるわけじゃねぇから」
「……あっそ。だったら今すぐこっから出てけ」
「はいはい。邪魔者は帰りますよ☆」
それにしてもあのクソビッチ
「つーか、俺のほうこそ時間の無駄だったし」
思わず口をついた
部室棟は相変わらず静まり返っていた。
スタスタと俺の履いたスニーカーが廊下を叩く音だけが聞こえてくる。
これでよかったのだ。重要なのは
だってほら、帰宅部なら
自分のやりたいことをやって、やりたくないことはやらない。
今までもそうやって生きてきたのだから、これからもそうやって生きていけばいい。
俺ってば、生き様がロンリーウルフ。マジカッコよすぎだろ。
廊下の窓から差し込む夕日が俺の背中に
そんな他人に聞かれたら恥ずかしいことを考えながら階段を下りていると、今更ながら大事なことを思い出した。
「……カバンとか教室に置きっ放しだったわ」
結局、部室棟からそのまま教室に戻る
あーもう面倒くさいってば。
次から美少女に呼び出されたときはカバンも持ち歩こう。
まっ、そんなイベントは二度と訪れませんけど。
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