第2話 忍法! 手遊びの術!!

先日の公園で起きた一件以来、2人が静かだ。


まー坊にいたってはカンチョーはトラウマになっているようだ。


母親からもこっぴどく怒られたので、当然と言えば当然だが。。。



「なー兄貴、最近まー坊のやつ妙に大人しいよな?」


お前もだろ?


とっさに切り返しそうになったが、実は俺も気がついていないだけで、自分自身そうなのかもしれない。


大怪我こそなかったが、こいつらに対しての危機管理の甘さを認識した出来事だった。


「まあ、自分の必殺技が通用しない相手と初めて対峙したからな。」

「人生初の挫折を味わってるんだろ?」


「ふざけてる場合かよ!」

「何か落ち込んでるまー坊見てるとこっちまで、気が落ちるぜ。」

「ちょっと遊んでやるか!」

「おーい、まー坊あたしと遊ぼうぜ!」


かなの声にふと反応して、かなを見るまー坊。


「おーけー!」


「おー!まー坊は英語も話せるのか!」

「えらいぞ~!」


たわむれ始めた姉弟を遠目にソファから眺める。


どうでもいいけど、何でまー坊の返事英語なんだ?


「今日はな、手遊びを教えてやるよ!」


「てーあほび!」


「あほじゃない、あ・そ・び!」


あながちまー坊は間違いじゃないよな。


にしても手遊びか。


かなにしてはかなり気の利いた遊びだ。


実際を手を動かして遊ばせることは、発育にとても重要だと聞いたことがある。


何でも、小さい子供は手先が不器用なため、手遊び等で訓練する必要があるのだとか。


ぐーちょきぱーの歌なんてリズムもあって、楽しい気分になれそうだ。


「んーそうだな。。。手遊びといえば忍法だな!!」


「なんでだよ!」


思わず反応した。


「いやいや、忍法は手をたくさん動かすんだぜ!」

「そんなことも知らないのか~?」


何故だろう?かなに馬鹿にされると異常に腹が立つ。


「いや、印は手遊びじゃないし。」


「いん?いやいや、そうじゃなくて、忍法の前に手をこうシュッシュと動かすだろ?」

「あれだよ、あれ!」


かなが得意げに、手を適当に色んな形で合わせながら見せてくる。


それを印というんだ。


「いや、だからそれは手遊びとは違うだろ。」


「まあ、想像力の乏しい兄貴にはわかんないって。」

「これが、手遊びである事を見せてやるよ。」

 

すっとかなが立ち上がる。


まー坊の方を向いて、また手を適当に合わせ始めた。


「忍法~こちょこちょ~!!」


かながすごい勢いで、まー坊をくすぐり始める。


「いや、なんでだよ!」

「忍法じゃないじゃん!体術じゃん!」


床に転げまわるまー坊。


執拗に追いかけるかな。


叫ぶまー坊とかなのこちょこちょという声がリビングに響き渡る。


「おいおい、そんな勢いではしゃぐな。」

「てか、うるせーよ。」


次の瞬間。


ごん!!


きれいな打撃音がした。


「あ。」


俺とかなの声がリンクする。


リビングにある本棚の足元でまー坊が頭を強打した。


まずい。


かなの手が止まる。


俺はすぐにマー坊に駆け寄った。


「きゃっきゃっきゃっきゃっきゃ!」


笑っていた。


「何でこいつ笑ってんだ。」


俺は不思議なものを観察するようにまー坊をのぞき込む。


「察するに、頭ぶつけたこと気付いてないよね?」

「おい!まー坊!大丈夫か??」

「怪我は?痛くねーか?」


かながまー坊の安否を確認する。


一連の俺たちの挙動を見て、まー坊の動きがぴたりと止まる。


「うわーん!ひ~~!!」


止まったと思った次の瞬間、まー坊は堰を切ったように泣き出した。


何故子供というのは、周りの人間が心配しだしたら、泣き出すのか。


もしかして、放っておいたら泣かないのか。


そんな事を考えながら、まー坊をなだめるかなを見ている。


「おーよしよし!痛かったな!」

「大丈夫だよ~!」

「よしよ~し!」


にしても、かなは子供の扱いが上手い。


弟とはいえ、子供に瞬時に寄り添える気がする。


自然と目線を合わせているのも、上から見下ろしているだけの俺とは大違いだ。


「よ~しよし!もう泣くな~!」


まー坊が泣き止み始めた。


幸い、切り傷などの怪我はなさそうだ。




「まー坊、今のが忍法!脳天破壊の術だ!!」


「だから体術じゃん!!」


というか技名が怖すぎるだろ。。。


自分の頭頂部を触りながら踊るかな。


「のーてんはかい!!のーてんはかい!!」


つられて、踊りだすまー坊。


「のーしぇん、のーしぇん」


あー、こいつらまたうるさくなるな。


そんな事を感じながら、俺はソファに戻るのだった。

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