第100話 手錠のままの脱獄

1958年のアメリカ映画です。


憎み合う者同士が手錠で繋がれるという映画はいくつかあったらしいが、この映画はその代表的名作と言われているそうだ。


深夜の囚人護送車の中で、シドニー・ポワチエ演じる黒人のカレンは歌を歌っている。

そのカレンと、看守のユーモアとやらで手錠で繋がれたトニー・カーチス演じるところの白人のジャクソンは、

「うるせい!やめろ黒いの!」と怒鳴る。

「黒いのと呼ぶな!殺すぞ!」

とムキになるカレンに、

「やってみな!」

と、ジャクソン。


その瞬間護送車が事故を起こし、2人は手錠で繋がったまま逃げ出すことになる。


もちろん警察は夜明けを待って2人の捜索を始める。


2人はまずなんとか手錠のクサリを切ろうと試みるが、それはびくともしない。


南へ行くか、北へ行くか、殴り合いのケンカになる。


「ケリをつけよう!」

という白人のジャクソンに、

「どっちかが倒れれば、にげられなくなる」

という黒人のカレンの言葉にケンカは休戦となる。


2人は急流を渡るために助け合わなければならないし、協力して獲ったカエルも焼いて、分け合って食べなければならない。


互いに悪態をつきながらも一緒に逃げるしかない。


ジャクソンが自分の吸っていたタバコをカレンにわたす。カレンは「ありがとう」と言う。


白人のジャクソンは、“ありがとう”と言われるのが嫌いだった。

高級ホテルの駐車場で働いていた時、こっちが車を預かるのにありがとうと言わねばならず、しかも声が大きいほどチップも高かったからだ。


一方黒人のカレンは、「黒いの」と言われるのが嫌いだった。

今より遥かに人種差別も酷い時代だった。


2人はとある集落に着いた。

わずかに、2人には理解に似たものが通い始めていた。


闇夜に紛れて集落に入るが、カレンはジャクソンを、白い顔が光って満月みたいだと言って、顔に泥を塗りたくる。

一軒の雑貨屋に忍び込もうと屋根から入った時、2人共に店内に落下して品物を粉々にし、村中を起こしてしまう。


2人は村人の集団に捕まり、縛り首にされそうになる。

その時ジャクソンが言う。

「オレは白人なんだぜ」

しかし村人は

「腐った白人だ」

といい、黒人のカレンに、ジャクソンに唾を吐きかけるよう命じる。

カレンはどうするか?


もうこれ以上スリリングで感動的な物語を明かすのはやめにしよう。

2人の逃避行はまだまだ続くのだが、この素晴らしい旧作、興味のある方は是非ご自分の目でご覧になっていただきたい。


ただひとつ、最後まで見て決してガッカリするような映画じゃないというひと言を付け加えておきます。

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