その他の映画

第75話 ペレ

1987年、デンマーク、スエーデン合作映画です。


私は自分でいうのも何だが、いわゆる一般に美しいとされるようなものが本当に好きらしい。


この映画もなんと言っても映像が美しいし、音楽は心に染み入るようだし、とりわけ主演のペレ少年が実に美少年だ。


物語はスエーデンからデンマークのボーンホルム島に移民としてやってきた父と子が、とある農場で様々な出来事を経験しながら生きていくというもので、たぶん2年とか、それくらいかけて撮ったのだろう、物語と共に、ペレ少年が心だけでなく、身長も成長していくのがしっかり捉えられている。


馬小屋を住居として与えられた親子の苦労、学校でいじめを受けるペレ、いつかここを出てアメリカや中国を見て回るのだという夢を持っていた農夫が頭を打って廃人になるという事件、性器を妻から切り取られてしまう女好きの農場主。

様々な出来事を目の当たりにして、ペレは成長していく。


実に完成度の高い、秀作である。


しかし今回私がこの映画を取り上げたのは、それとは別に書きたいことがあったからだ。


いい映画には、当然忘れられない場面というものがあるものだ。

ある事件が起き、このペレ少年が全裸で飛び起きてズボンを履くカットなどは、私には強烈なエロティシズムと共に忘れられない場面となっている。


変態扱いされると困るのだが、「ローマ」でも、青年の全裸が出てきて、ああ、やっと修正せずに画面が見られる時代が日本にも来たのかな? と思ったものだが、この思春期のペレ少年は、当時の映倫の目をかろうじてかいくぐったのであろう、オチンチンもちゃんと写っているのである。


それがどうしたと言われそうだが、このなんとも心に残る美しさは、この映画の全体的な、じつに見事な美しさを象徴しているように私には思えるのだ。


変な男だと思わないでほしい。

この映画を見て、この親子に、そしてこのペレ少年に、どうして深い愛着を抱かずにいられるだろう。


ラストにペレ少年が1人で氷河の上を旅立ち、主題曲が流れる場面など、すっかり成長したペレ少年の行く末の安全を心から祈らずにはいられないのだ。


カンヌ国際映画祭パルムドール、アカデミー外国語映画賞を受賞した。

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