第73話 雨 杜和orアメたぬきさま 庭いじりと映画について『グロリア』VS『LEON』
庭いじりと映画について:『グロリア』VS『LEON』
たられば、もし、仮に……。
この手の言葉が好きでよく使う。
生産性もないし、無駄なことかもしれないが、この言葉なくして私の実態はどこにあるのだと思っている。
先日の日曜は陽差しも柔らかく、風も透明だった。
冬のあいだに庭いじりをサボりにサボったあげく、雑草が増え、バラの枝は好き勝手放題に伸びきっていた。
剪定の必要はあるが、しかし、カクヨムで手一杯だった私は庭の手入れなんて忘れた。
だが、この日曜日は春の穏やかな気候のなか、とても心地よかった。
冬の間、
室内で考えたことは、もし、こんなに寒くなければ、あの枝を切り、雑草を抜くのにといったことで、呆然と見つめるしかない自分に歯噛はがみしたい思いを抱いていた。
そう、まさしく、この日は庭いじりの日になった。
私はチェック柄のハーフパンツをはき、白いえり付きの長袖ポロシャツに、日よけ帽子と軍手、サングラスという、完璧な庭いじりの格好でいた。
このファッションなら多少汚れても心配はなく、庭で雑草を取るに最高の形であって、十分満足のいくものだったと思う。
私は庭に出た。
もう、ありえない寒さはなく、心地よい春風が吹き、そして、ウッドデッキには、なにかに血迷って自分で組み立てたガーデンソファが置いてある。
とりあえず、私はソファに寝転び、レモネードを飲み、スマホを手に取った。
デッキの天井にはターフがかかり、そこからキラキラ光る太陽光を間接的にあびながらカクヨムするのは至福の時間である。
冷えたレモネードの氷が溶けきるころには、もうすでにヤリきった満足感に浸されていた。
「楽しいそうだな」と、散歩から帰ってきた夫が言った。
「うん。庭仕事をしなきゃと思って」
「庭? 行く前と変わったように見えないが」
「やっぱりそう思う?」
そして、考えたのだ。
雑草はいつまでも雑草のままそこにあるし、バラの枝もどうしようもない。しかし、焦らずとも雑草は逃げないし、枝だってそうだ。いや、いっそ逃げてくれたほうが嬉しいのだが。
カクヨムは読み切った。庭いじりの格好には満足しており、とても充実した半日だったことでヨシとしようとした。
そこで、私は部屋のパソコンに戻って、なぜかレネさんから依頼された映画評論を書こうと思った。
現在連載中の長編『ファム・ファタール-心を失った皇女-』ではなく、そっちを書こうと思ったとき、なぜ、庭の雑草が今も残っているのだろうかという同じ疑問を感じはしたけれど。
それに夏緒さんからは、「アナタそろそろファムファタに本腰入れなさいよ!!ほんとに時間ないわよ!!」と嬉しい叱咤激励が来てるけど。
なぜか、私は好きな映画について考えていた。
【映画『グロリア』VS『レオンLEON』 】
1980年に公開されたアクション映画『グロリア』。
ハリウッド映画といえば、超美人女優が主役であることが共通の認識だった時代に、そこに殴り込みをかけたのが、ジョン・カサヴェテス監督で。
妻であったジーナ・ローランズを主役にして、かっこいいハードボイルドな女性映画を制作した。
グロリアという女はガサツで品がなく、タバコを加えながら銃をぶっぱなす、優しさのカケラもない女だ。母性などまったく持ち合わせていない。
その女性がひょんなことから少年を助けてマフィアたちから逃げ回る。たったそれだけの映画だが、時間を追うにつれ、擬似親子になっていく過程が本当に眩しい。
グロリアは少年を救うことで、自らのやけくそな半生に意味があったと思ったのだろうか。
のちに『LEON《れおん》』という名作映画ができたが、その女版のような作品で、作品としては『LEON』より先である。
元ネタかという映画だ。
たぶん、そうだろう。
映画『グロリア』はのちに、人気女優シャロン・ストーンでリメイクしたが、彼女はグロリアを演じるには美しすぎたと思うし、なんと言っても線が細い。
ピンヒールが似合いすぎるのだ。
ジーナ・ローランズのピンヒールは、そのピン、すぐ壊れるんじゃないかって心配するほど骨太で野生的だ。
『LEON』は、男臭さと字も読めない無教養の殺し屋に、ジャン・レノが、どハマりしていた。男の哀愁が秀逸な作品であった。
映画『グロリア』と『LEON』。
女版と男版。
ガサツで無教養で、だからこそ、人間の悲しさが浮き出る両作とも素晴らしい作品になったと思う。
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『ファム・ファタール-心を失った皇女-』〜奴隷を愛した姫君は世界の片隅で恋に溺れる〜
https://kakuyomu.jp/works/16816452218537897016
現在第三部「ドS奴隷に皇女は溺れる:官能の日々」を連載中です。
お読みくださると、とっても嬉しいです。喜びの余り、ピンヒールで、カツカツと町を30分ほど、走り回ってきますから。
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