第61話 ローマ

2018年、アメリカ、メキシコ合作映画です。


舞台は1970年頃のメキシコシティのコロニア・ローマというところだそうで、題名のローマはそこから来ている。


しかし、それにしてもどうしてROMAという題名をつけたのだろう、何か違和感がある、と思ってある記事を読んでいたら、面白いことに気付かされた。

ROMAは、逆から読むとAMORで、スペイン語で、“愛”という意味である。

物語を深く読めば、作り手の意図するところが、案外愛に引っかかってくるのかもしれない。


主人公はクレオという名の若い住み込みの家政婦の娘で、雇い主のアントニオ、その妻のソフィアと4人の子供、そしてソフィアの母と、クレオと同年代のもう1人の家政婦アデラと共に暮らしている。


家政婦といっても、まるで家族のように大事にされていて、ボーイフレンドと寝て、妊娠しても勿論お暇を出されるわけでもなく、むしろソフィアが病院に連れて行ってくれたり、ベビーベッドを買ってもらうためにソフィアの母が家具店に連れて行ってくれたりする。


しかし子供は死産だったが、その出産シーンのリアリティは、これは本当に妊娠して本当に死産だったのではないかとしか思えない。

実に真に迫っている。


それゆえ心に傷を負ったクレオが、たまたま海で溺れそうになった2人の子供を助けることになる場面も、これは本当に溺れているのではないか、どうやって撮影したのだろうと思わせる迫力があり、圧巻である。


でも、それよりも何よりも、1番特筆すべきはモノクロの、明晰で繊細な、実に見事な映像美だろう。


私は最近DVDなどを借りて見て、これは確かにひと味違う、ご紹介する価値があると思った作品のみを取り上げているのだが、この「ローマ」は、ネットフリックスで、その映像に一目惚れして観ることにした作品なのだ。


ご覧になっていただければ、その映像が並大抵のレベルでないことは、すぐにご理解いただけると思う。


これは確かにある新しさを持った映画だと思う。

物語というより、その語り口と映像についてである。


ベネチア国際映画祭金獅子賞、アカデミー賞外国語映画賞、及び監督賞、撮影賞受賞。

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