第51話 恋する惑星


1994年の香港映画です。


以前取り上げた「花様年華」のウォン・カーウァイ監督の作品です。

恥ずかしながら、私は「花様年華」を取り上げるまで、ウォン・カーウァイという監督さんを全く知りませんでした。むしろ読者様の方がずっと詳しく、これではちょっと私が書くよりも以前からご存知の方が書かれた方がいいな、と思い、今回は読者様から原稿を募り、それを紹介させていただく形にしようと思いました。


そういうわけで、読者様にお願いをしたところ、皆さん書いてくださいましたよ、ステキな原稿を。


まずは最初に到着した烏丸千弦さまの原稿から紹介させていただきたいと思います。



 〈恋する惑星〉は上映されていた頃ではなく、もっとあとにDVDをレンタルして観ました。金城武さん目当てだったのですが、それが今では大好きなウォン・カーウァイ監督作品との初の出会いになりました。

とにかく映像が綺麗で、(当時の)香港らしい雑然とした街の雰囲気と、まるでヨーロッパの青春映画のようなポップな雰囲気とが合わさって、独特な感じがしました……ちょっとヌーヴェルヴァーグっぽさもあるかも。

 髪の短いフェイ・ウォンはとってもチャーミングだし、トニー・レオンも警官の制服が似合っていてとてもかっこよかった憶えが(あれ、金城は?w)。恋愛ものというよりも、青春群像劇のようなイメージのほうが強かった気がします。

 そしてさすがのカーウァイ監督、音楽センスも最高でした。ジャンルの様々な音楽が効果的な使われ方をするんですが、後半部分でかかるママス&パパスの"California Dreamin'"がなんといっても印象的で、映画を観終わったあともずっと残るんです。同じく音楽センスの良いタランティーノ監督が絶賛したというのも納得です。

 あと、これはオマケの豆知識ですが、金城武は大のパイナップル嫌いで、パイナップルの缶詰を食べるシーンでは実は、桃を食べてます(笑)



伝わって来ますね。この映画がどんな映画なのか、その内容と雰囲気が。烏丸さまは、ある意味、現代アジアのヌーベル・バーグのように感じてらっしゃるのかもしれませんね。当時としてはかなり独特だったのですね。


次にご紹介するのは、柊圭介さまの原稿です。



『恋する惑星』という可愛らしい邦題よりも、原題の『重慶森林』の方が似合う映画だと思います。あの雑多にごちゃごちゃと入り混じった香港の街のカオスな感じ。それを切り取ったような映像。

この映画、封切りの時に劇場で観たのですが、色彩感覚、光の加減、スローモーションと早送りを組み合わせた不思議な時間感覚、全部が斬新でした。

それまで香港映画といえばカンフー、みたいなイメージしか持っていなかったので(それもどうなのか)、この映画はそのイメージを見事に払拭してくれました。あとこの監督はやっぱりアジア人を美しく見せるのに長けていると思います。肌の色や質感にアジア的な色気を感じるのです。

でもなんだかんだ言ってもやっぱりこの映画の魅力はフェイ・ウォンだと思います。あのベリーショートに細くてしなやかな体。凛とした顔つき。美人じゃないのにすごくきれいに見える。彼女が画面に登場するたびに釘付けになりました。人気歌手だとは知らず、なんと魅力的な女優さんだろうと思ったものです。

幾度となく流れる「夢のカリフォルニア」もとても印象的です。それと同じぐらいに、フェイ・ウォンが歌っている主題曲の「夢中人」も頭に残ります。



・・・というわけで、なるほどやはりとても斬新な印象を持たれたんですね。

フェイ・ウォンさんも、私は歌は聴いていたのですが、今回初めてそのお姿を拝見しました。

とても個性的な方だったんですね。柊さまの書かれていること、私も同感でした。


最後に、アメリッシュさまにまとめていただく形になりましたが、アメリッシュさまはウォン・カーウァイ監督作品全体について触れられていて、最後に載せるのにちょうど良い内容でしたので、ここに紹介させていただきます。




ウオン・カーウァイ監督が出て来た時、日本だけではなく、ついにアジアも世界に発信する実力のある大監督がでてきたのだと、思ったものだ。


その後のアジアの発展、相対的に下がっていく日本の地位に少し歯がみする思いがないと言えば嘘になるが、それにしても、彼、天才。

映像の瞬間を切り取るセンスがずば抜けていて、洒落ている。


「恋する惑星」は、彼の出世作だそうだが、他作品は鑑賞したが、この作品、あいにくと見ていない。ネットフリックスなどで探したが、残念ながら見当たらなかった。


ただ、下記の一文を読んだ。


『刑事223号は、雑踏の中で金髪にサングラスの女とすれちがう。

そのとき、彼女との距離は0.5ミリ-57時間後、僕は彼女に恋をした』


やはりウオン・カーウァイ監督は天才だ。これだけで思ってしまう。こんな文章が書きたいと思ってしまう。



うーん、というわけで、いかにこの映画が独特で斬新で、そしてウォン・カーウァイ監督がいかに優れた天才であるか、というところで、今回の紹介を締めくくりたいと思います。


「恋する惑星」の紹介に、快く原稿をお送りくださった、烏丸千弦さま、柊圭介さま、そしてアメリッシュさまに心より御礼申し上げる次第です。


ありがとうございました。














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