第50話 めまい

1958年のアメリカ映画です。


初めに断っておくと、私はヒッチコック作品に関して特に詳しいわけではない。

物語も大抵は混み入っているので、こうした「映画の旅」などといったもので取り上げるのにも非常に苦労する。


しかし、前回「北北西に進路を取れ」であまりにも何も書けずに終わってしまったのが気になっているのと、この「めまい」は、近年特に「映画史に残る100本」などというと必ず上位に名を連ねる、極めて評価の高い作品であるだけに、やはりこの「映画の旅」でも取り上げないわけにはいかないと思ったのだ。


私が初めてこの映画を観たのは35年前、映画館でのリバイバル上映であった。

その時も感じたことだが、今回DVDを借りて観て、やはりこの作品の雰囲気は、他のヒッチコック作品と比較すると少し異質なものがあるように感じた。


私はヒッチコック作品を全て観ているわけではないので、確かなことは言えないのだが,この作品は、ハラハラドキドキとか、手に汗握る、というのとひと味もふた味も違った、いわゆるいかにも静かなミステリーといった印象で、その静かな展開、静謐な作風が、逆にいかにも心理的な恐怖を感じさせるという感じなのだ。


物語を簡単に紹介すると・・・


高所恐怖症から刑事をやめたスコティに、旧友のエルスターが妻のマデリンの様子がおかしいので調査してくれと依頼し、スコティは渋々引き受ける。


スコティはマデリンを尾行するうち、マデリンにはカルロッタという先祖がいて、マデリンはその霊に取り憑かれているらしいと知る。


しかし、尾行を続け、調べるうち、スコティはマデリンを愛するようになっていく。


スコティとマデリンが愛を深めるうち、ある時マデリンはスペイン風の教会の話をし、スコティはその教会を知っていたため、マデリンを伴ってその教会へ行く。


ところが突然マデリンは塔の階段を駆け上がり、高所恐怖症のためやっとの思いで追いつこうとするスコティの前を真っ逆さまに落ちていった。


マデリンは自殺とみなされ、夫のエルスターはヨーロッパへ移住するという。

愛する者を失ったショックで、スコティは完全にうつ病にかかってしまった。


数年後,スコティは町でマデリンそっくりの女性ジュディと出会う。


初めはジュディはマデリンとは別の存在だと思っていたスコティだが、段々と何かおかしいと気づき、ジュディがマデリンと同じネックレスを持っていたことから2人は同一人物だと確信する。


つまりマデリンはエルスターの妻などではなく、妻を装って芝居をしていたのであり、実際の妻が、エルスターによって塔の上から落とされたのだった。


そのことを明らかにしようと、スコティはジュディをスペイン風の教会の塔の上へ連れて行くのだが,突然現れた修道女に驚いたジュディは、塔から思わず落ちてしまうのだった。





ウィキペディアなどで調べると、ヒッチコックはこの作品で床が落ちるような「めまいショット」を考案し、のちに多大な影響を与えたとある。

そうしたことも、この作品が高く評価される一因になっているのかもしれない。


いずれにしろヒッチコック、こんな監督ちょっといない。

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