第27話 シベールの日曜日
1962年のフランス映画です。
「シベールの日曜日」という映画をご存知ないだろうか。
もう随分昔のフランスの白黒映画で、恐らく「レオン」などを語るのに、その深い影響は決して無視できない映画だと思うのだが、案外既に忘れられた感のある作品でもある。しかし、このまま忘れられてしまうのはあまりに惜しい、私も大好きな作品のひとつなので、ちょっとここに書き残しておきたい。
この映画を好きな方の中には、勿論ロリコンの方もいらっしゃるのだろう。しかしそういう視点でこの作品を語ることほど「「シベールの日曜日」の製作に携わった方々に失礼なことはない。
この作品は全くプラトニックな純愛を描いたものであり、1時間50分にわたる一編の詩であると私は思う。
戦争中にパイロットだったピエールは、墜落の時一人の少女を巻き込み、そのショックから記憶喪失になってしまう。
その後ヴィル・ダブレイという町の駅で、同棲しているマドレーヌを待っている時、父親に連れられ、寄宿舎にあずけられに行く少女をみかける。少女は自分が捨てられるのが分かっていて、行きたくないと泣きながら父親に哀願している。
泣かせちゃいけない、と、ピエールは手にいっぱいのガラス玉を少女に見せ、ほら、星のかけらだよ、と言う。少女は一瞬微笑む。これがふたりの出会いだ。
以来ふたりは日曜日ごとに会うことになる。
そのふたりを取り囲む自然には、セルジュ ブールギニョン監督や、アンリ ドカエのカメラ、モーリス ジヤールの音楽などの詩的な感性がきらめく。
水の波紋、冬枯れの木々、アルビノーニのアダージョが流れる中、霧の小道を歩くふたり、凍った水面をキュルキュルと走る小石、水面を吹き渡る風にオーバーラップするシベールの囁きなど、たぐいまれな美しさのなかに物語は進む。
しかし、いくら純愛といえども、30を過ぎた記憶喪失の男と12歳の孤児となった少女の愛を世間が、社会が、許すはずがない。
やがて物語は、悲劇的な結末を迎えるのだ。
やはり、こういう形でしか救われることのない男には、こういう結末しかなかったのだろうと思わざるを得ない。
アカデミー外国語映画賞受賞の名作である。
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