第2話 魔王

零が深草村を出発した同時刻――――

大都市フォルティナス、その中央の場所に優雅ゆうがに存在する大聖堂“王室”


「今日も変わりはないか?」

「はい、静かな夜明けとともに我らの朝を邪魔する者どもは、ゼロです」


豪華な朝食を楽しみ、朝からブドウジュースを飲むこの男の名は、現在この世界で最も権力を持つ大魔王“ファーラン”である。


「もう一杯!」

「かしこまりました」


飲み干されたグラスにれたてのぶどうの果実を手で力強くしぼり、ジュースがそそがれる。先ほどから、ファラーンの面倒を見ている執事のようなこの男も、人間ではなく魔族であり、古くからファラーンのために身も心も捧げ、数多くの魔族の中でも1.2を争う実力者で、右腕のような存在だ。

また、各地に縄張りを持つ幹部たちのリーダーであり、実質じっしつ魔族たちを細かく指導しているのがこの男“ネントス”なのだ。


「今日はこの後、どうなさるおつもりですか?」

「う――――ん、そうだな・・・寝る」


「左様でございますか、すぐにベッドメイキングをさせてまいります」

「あー、あとお菓子を大量に用意して、できればチョコを多めにお願い」

「準備しておきます」


「あっ・・・そうだった、そうだった・・・3日前に東の地から報告があった奴らはどうなった?」

「“ホースフィールド”での5人の剣士のことですね・・・報告書では、“アダイ”と激闘げきとうり広げ、前脚まえあしひたいに深く傷を負ったとあります。しかし、さすがは幹部といったところでしょう。5人のうち2人に重傷を負わせ、残り3人と戦力を減らした瞬間に撤退てったいしたそうです。現在も部下たちによる大規模だいきぼ捜索そうさくにもかかわらず、いまだ発見されていないとのことです」


「ふーん、アダイと戦って生き残る人がまだいるとは・・・面白い。この俺のところまでたどり着ければいいんだけど・・・くっ」

「何を笑っているのです。アダイに傷を負わすとなると相当の手練てだれ・・・かくれて傷をいやし、また力をつけて必ず戦いを仕掛けてくるはずです。そうなる前に、必ず見つけ出し息の根を止めなければ」

「うんうん、でもネントスはここを動いちゃだめだよ・・・せっかく現れた獲物なんだから、気長に待とうよ。まあ、俺の予想では今度戦いが始まったらアダイが確実に全員殺すさ・・・くくっ」

「そうなればいいんですが、というか野菜を残さないで食べてください」

「えー、俺は野菜が大の苦手で」

「残したら、チョコは準備いたしません!!!」

「食べます」


二人のやりとりはさておき、さきほどの話題で出てきた2つの人物。

東の地“ホースフィールド”で起き事件を楽しそうに話すファーランと、不安そうに話すネントス、一体、アダイとは何者なのか?五人の剣士はどこに隠れたのか?それは、少し遠くで明かされる。


その前に話は、深い深い森の中をゆっくり闊歩するあの男へと戻っていく


「あー、熱い・・・」


村を出てまだ少ししか歩いていないのに、大木たいぼくのふもとで座り込み休憩きゅうけいをしていた。

全然、ピュアリングが案内する場所に辿り着きそうではありません。

頑張れ、ぜろよ。負けるな、ぜろよ。

旅はまだ始まったばかりです。

革命を起こすその日まで、ゆっくり見守りましょう。


零の持ち物

New 木の実(かじってみたが不味まずかった・・・でも非常食にはOK)

   丸い石(右手)いい感じの平べったさ、川を見つけたら水切りをする。

   木の枝(左手)とりあえず、ひまだから拾って振り回していた。

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リングクエスト 戸田 博子 @toda-hiroko69

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