第23話 三丸(その3)
「そして?」
「実は、この件に関して、僕はもう一歩先の考えも持ち合わせているんだ」
凛太郎の発言は恭介に少し挑発的に響いたかもしれない。
恭介は意表を突かれた自分を落ち着かせるように眼鏡を掛け直した。
「それは、ぜひ聞かせてもらいたいね」
恭介の射るような視線に貫かれて、凛太郎は途端に緊張感で胃が縮むのを味わった。
しかし、こういう性に関する問題で
「つまりね、三丸とは、するものなのか、見るものなのか、ということなんだ」
「ん?どういうこと?」
「さっきの問いで、三丸はそこまでギラギラして求めるものでもないっていう答えに僕たちは行きついた。だけど、その行為が世界からなくなるのは僕たちにとって非常に困ることになる。なぜなら、僕たちの四丸には、おかずが必要だから。そのおかずはエロ動画だったり、エッチな妄想だったりするわけで、そういう意味で三丸は僕たちに必要なんだよ。自分が積極的にしたいわけじゃないけれど、動画では見たい」
凛太郎はここで恭介の反応を確かめるために一旦切った。
「なるほど。それはその通りだ」
恭介は深く賛意を示した。
凛太郎はそれに力を得て、さらに言葉を続けた。
「これは僕が臆病なのかもしれないけれど、僕は三丸の当事者に自分が必ずしもなりたいわけではない。当事者になることは偉大な経験だとは思うけれど、それと引き換えに非常に大きなものを失う。例えば、それが恋愛であれば、やがて失恋による苦痛が待っている。風俗に行けば多額の出費がつきまとうし、病気をもらうこともあるらしい。犯罪的なことをすれば人生を棒に振る。だけどエロは好きなわけで、これなしには生きてはいけない。だからこそ、AVはノーベル賞級に素晴らしいものだと思うんだ。AVを観ることに苦痛はないし、経費は比較的少額だし、人生を棒に振ることもない。自分の好きな時に見ることができて、作品の内容に興奮しつつも、心穏やかに性的欲求を満たすことができる。あくまでも僕にとってはだけれど、リアルで三丸をすることより、画面で三丸を見ることの方が明らかにメリットが大きい。童貞の強がりと言われれば、それまでだけどね」
何とか自分の言葉でゴールまでたどり着けて、凛太郎はほっと胸を撫で下ろした。
頭の中だけで考えていたことを、誰かにこんなに多くの言葉で説明したことは初めてで、ひどく疲れた。
「たろちゃん」
恭介は少し頬を紅潮させ、目には薄ら涙を浮かべて、凛太郎に握手を求めてきた。
「ん?」
「貴重な見解をありがとう。俺は感動したよ。こんな立派な見識を持つたろちゃんはこれからも俺のKTであってくれ」
「ん?何?KT?」
「心の友、だよ」
「さっき、アルファベットを三丸に変えたからって、急に変なアルファベットの使い方しないでくれる?」
「何か、面白いかなと思って」
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