柿の木の下で眠る君へ

砂上楼閣

第1話

ごめんね、一言きみに謝りたい。


実家に顔を出すたび、どんどん弱っていく君に気付いてた。


前みたいに鳴かなくなったし、ご飯も残してた。


羽もだいぶ抜けちゃったね。


日差しの当たる場所でじっとしてた。


もう止まり木に上がることもできなかったのかな。


なんだか一回り小さくなったみたいだね。


もともと私の両手で包めるくらい小さかったのに。


ケガをして、飛べなくなって、そうして私のうちにきて。


君は一度だって私の手から直接ご飯を食べてはくれなかったね。


そっと手を伸ばす私から逃げて。


飛べないのに、飛ぼうとして、転んで。


両手で包むように持たないとすぐ暴れて。


君のおうちを掃除するにも一苦労だったよ。


けど、もう君は鳴くことも、逃げることも、暴れることもしないんだね。


あんなに温かかった君は、こんなに冷たくて、軽くなった。


初めてなでた君の体は、すごく、作り物みたいだった。


どうして私は君の最期に立ち会えなかったのかな。


「また来週ね」なんて。


なんでもっと話しかけてあげなかったのかな。


近くにいてあげられなかったのかな。


どうして連れて行ってあげなかったのかな。


せめて最期だけは私がそばにいてあげたかったな。


君の軽くなった体を私のタオルで包み込む。


玄関を開けてすぐそこの、君がいつも見ていた古い柿の木。


その根元に穴を掘って、君を寝かそう。


ご飯と水、おもちゃも一緒に。


さようなら、ごめんね。


ありがとう、またね。


行ってきます。

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