No.2 「恒星シリウス《救いの調べ》」

第1話 漆黒の渦

宇宙とは何か


宇宙には無数の宇宙が存在し、

そこに数え切れない程の銀河と星々と生命が


生まれては消えている



宇宙とは何か


宇宙とは ”無” であり ”有” である


無が重なり合い、さざ波をおこし 有を生み出す


波間の対流のように、一部は渦になり、分離し 結合し 消えてゆく



その渦が 銀河であり



結合が スター・ゲートである




我々の宇宙も、別の無を内在し、 時には関係し 顕在化し 消えてゆく


古代人が書き残した神話の


神々のように


そこに在ったが、 今は無い




宇宙とは ”無” であり ”有” である








スター・ゲート


宇宙が割れ、別の宇宙がそこには存在していた。


 サジタリウスで起きた出来事は、宇宙という概念に我々がまだ知り得ない未知の活動がある事を再確認した出来事であり、

Sir アルフレッド・グリフィンは、その一端を自らの分身であるArdy人型の分身体を通し、その目に刻んだ。


「 私よ… 許してくれ… 」




「アルフレッド」

 美しく優麗で優しい雰囲気を漂わせる女性が、夕刻の柔らかい光を煌煌キラキラとその髪に輝かせながら、白いベットの上で休んでいる、老齢のアルフレッドのそばに歩み寄てくる。


「どうしました、マスター・ゼウス」


「サジタリウス No.4は残念でした」

「例え外宇宙に出たとして、次にこの銀河に戻って来れるのは数億年先です」


「あぁ…」

「だからこそ、 探査は続けてくれ」

「残ったクルーで拠点を再構築し、探査を再開してほしい」


「わかりました、アルフレッド」

 柔らかく目を閉じ、アルフレッドに応えるマスター・ゼウス。


「それと、シリウスからレポートが届いていますが、お読みになりますか」


「ありがとう、前に出してくれるか」


アルフレッドの前に半透明のスクリーンが浮かび上がり、シリウスのレポートが表示された。


□ Report No.52 : Sirius explorations. / Date 22.May.5870

  Signature : Alfredo Griffin


 探査機SI-N3(シリウスNo.3)はシリウス星系の近くに拠点を構築し、そこからその惑星系を探査し2年が経過。

 シリウスは二つの惑星系が重なり合う並列惑星系であることは以前のレポートでも報告をしたが、その二つの惑星系にある恒星の間に小さなブラックホールらしき存在が確認されたので報告をする。

詳細は各レポートを参照









ゴォォ…


 無音の黒い渦がそこにあった、漆黒の渦は光をも飲み込み、存在する物全てを否定しているかの様に静かに佇んでいた。




「マックス、その後あのブラックホールの事は何か解ったか」


鈍い光をその鉛色の身体に滑らかに反射させながら、2体のArdy人型の分身体がフローティング・スクリーンの前で会話をしている。


「あぁアル、謎だらけだがな、何となく解ってきたぜ」

「質量はシリウスとほぼ同じだが、ミニブラックホール程ではないな」

「その為、引力はそれほどでも無いが引き込まれたら、アル、お前でも脱出できないぜ」


「あぁ、厄介なリトルデビルだな」

肩を竦ませ、少しおどけて見せるアルフレッド


「そもそも何であんな所にブラックホールが出来ているんだ」


「多分、元々ここには三つの惑星系が存在していたんだ」

フローティング・スクリーンに整然と並ぶ、3つの惑星系が映し出された。


「その証拠にブラックホールがある惑星系の一番外側には、取り残された惑星が残っている」

「何かしらの切っ掛けで中心の恒星が崩壊し、その付近にあった惑星達がその崩壊と共に飲み込まれ、ブラックホールに変化したんだろうな」


アルフレッドが言葉を続ける。


「知ってるかマックス、遥か昔の古代エジプト文明では、シリウスは神格化され豊穣の女神ソプデトとして崇められていたんだ」

「シリウスは、地球の営みと深く関わり、その動きは地球と呼応しているかのように連携し、洪水の時期を予測する星として重要視されていた」

「まぁ、単に地球の公転と、シリウスの位置が良かっただけかもしれないがな」

「ただ、その女神ソプデトをヒエログリフでは△(三角形)で表しているんだ」

アルフレッドは両方の親指と人差し指で、三角形をつくりマクシミリアンに見せる。


「シリウスの三惑星系と、女神ソプデトの三角形か。偶然だとしても古代エジプト人達にはシリウスは3つに見えていたのかもな」

マクシミリアンは少し頷き、その三角形を見つめながら応える。


「それがいつの間にか、一つは消滅し黒い渦になり、一つは小さく萎んでしまい、

今は蒼白く光るシリウスAだけが残っている」

「この黒い渦はその変化の鍵を握っている、それと共に地球に何かしらの影響を与え、親和性がある物質がここには存在する可能性は高い」

「地球に最も近い恒星として調査をしておくべき星であり、古くから人々を魅了してきた神話の星として、とても興味深い星々だしな」


「あぁ、シリウスは子供の頃から眺めていたよ」

マクシミリアンは蒼白く輝くシリウスを見つめながら話す


「夜空に輝く星々の中で、ひときわ輝いていた…」

「何かメッセージを発しているかのような、とても心惹かれる星だったな」

「…」


マクシミリアンは少し間を置くと、アルの方に振り向き、

「そろそろ始めるか、アル」


「あぁ、調査し見つけようぜ俺たちが探している物を」


「信頼できる仲間達がいれば、見つけられるさ」


「マスター・ヘルメス、ヴィッカリー博士、トーマス、エレン、サンダース、イェーガー、そしてマクシミリアン、お前だ」


 同じオリオン・アームに存在する地球とシリウス、地球との親和性がある物質を求め、その謎を解き明かす探査が始まろうとしていた。

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