第5話 スター・ゲート

 キセノンガスに覆われた謎の巨大ガス惑星、その隣のアクチノイドを有する岩石惑星と共に、重い鉛色をした惑星達は 静寂に包まれた漆黒の宇宙に佇んでいた。

 トーマス率いる球体の無人探査機十二機は巨大惑星上空に展開し、上陸作戦の第一段、全域測定作業が今、始まろうとしていた。


「全機展開、AI-I及び各スキャニング機器動作確認、放射線レベル、スタビライザー安定」

「これより、No.1から順次降下する」


ゴォォォ ゴォォォ ゴォォォ


 無機質な球体の形をした無人探査機が、時間差で鉛色の雲の中へと降下してゆく。

 予測される地表までの距離は約十二万キロ、約四万キロのキセノンガス層を過ぎ、八万キロの液体ウランの海を抜けると、様々な元素が交じり合った中心核へ到達する。

 ただその中心核周辺の圧力は数万パスカルを超え、どんなに強固な素材でも形状を維持する事が困難なエリアであった。


バッ バッ バッ


「探査機、大気圏突入」

「機体外壁、圧力上昇」

ピ ピ ピ


 巨大ガス惑星の成層圏は暗闇に支配され、キセノンが冷えた極寒のジェット気流が無人機に襲い掛かる。




「深度、二万」

「機体及び、各機器に異常なし」




ピッ ピッ ピッ




「深度、四万」

「機体及び、各機器に異常なし」

「これより液体ウラン層へ入る」


バァァァ

超高密度に圧縮され、二千度を超える高熱の暗黒職に輝く鉛色の液体が、容赦なく機体を圧縮してゆく。



「どうだトーマス、何かありそうか」

「今の所、何もないですね」

「そうか」





「深度、六万」

「機体及び、各機器に異常なし」

「圧力が一万を超えました、機体が3%収縮しています」



ピィ ピィ ピィ ピィ

圧力警告が鳴る。



… ガッ … ガッ … ガッ ガガガガガ …

「放射線による電波障害も起きてきたぜ…」




「!」

「… なんだ… これは」

「アル、何か出てきたぞ」

 アルフレッド達の目の前にあるモニターに何かの映像が浮かび上がってくる。

ピ ピ ピ ピ ピ 


「円錐形の山か」

「それにしても標高二万を超えるぜ」

 その円錐形の突起は徐々にその姿を現し始め、

バァァァ…



「深度七万」

「これは… 円錐の突起が中心核全体を覆っているぞ!」


ゴォォ…

その全体像が現れてきた。


 メインモニターに映し出された中心核はとても異様な形状をし、核全体が標高二万キロ超える鋭利な円錐形状の突起が核全体を覆い、

この世の物とは思えない、異様な雰囲気を漂わせていた。


「結晶構造なのか…」

「トーマス、詳細を調べてくれ」

「了解だが、アル、探査機の機体がそろそろ限界だ」


ゴッ!


「一機、潰れたぞ」

「そろそろ限界か」


ゴッ! ゴッ! ゴッ!

「また三機潰れた!」

「測定能力が30%ダウン、中心核に近付くのは無理だ」

「残りの探査機を深度七万で固定」

「集められるだけ、情報を集める」

「アル、放射線障害でブースターが必要だ」

「新たに強力な探査機を増やすしかないか…」

 アルフレッドが、メインモニターを注視していると、その横にあるサブモニターの数値が何かの接近をキャッチした。


…ピッ、ピッ、ピッ、ピッ 宙域圧力上昇…


「マスター・アルフレッド」

「どうしました、マスター・ヘルメス

「先日の彗星が近付いてきます」


「彗星…」



ゴォォォ…   ォ ォ  ン    …



  彗星は不気味な音色サイマティクスを奏でながら、アルフレッド達の横を通過し、アクチノイド系の岩石惑星と、キセノン系の巨大ガス惑星の間を通り抜けていった。

 アルフレッド達は、その彗星が遠く、この惑星系に現れた事に違和感を感じていたが、異様な様相を呈している中心核と、次々と破壊されてゆく探査機の状況に意識が集中し、3.7パーセクの異常な距離を移動してきた事には 気が付いていなかった。


その時


「おい! アル!」

「どうしたトーマス」

「変だ! か、核が!」

 

―バッ バッ バッ 

突然の鋭い閃光ともに、核の鋭利な円錐の周りに稲妻が走り出し、


ЖЖЖЖЖ バァァァァァァ!!!!!! ЖЖЖЖЖ


一瞬にして、その稲妻は核全体を覆った。



そして、中心核に発生した稲妻は探査機に誘電し、次々と探査機が破壊してゆく。

「アル! やばいぞ!」


~ ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ ~


 今まで聞いた事の無い、地響きのような重苦しい殷雷いんらいを轟かせ、稲妻の熱で暖められた液体ウランが対流を始め、液体ウランの海とキセノンの雲が融合し始める。


ゴゴゴゴゴゴゴ…


 液体ウランとキセノンの雲は激流となりながら、融合する速度を速め、激しく発光しながらウランとキセノンの核融合が始まると、


ЖЖЖЖЖ バァァァァァァ!!!!!! ЖЖЖЖЖ


激しい稲妻の光と共に、大量の蒼白いプラズマを発生させ、


―ガガガガガ!!

ガス惑星の上空にいるアルフレッド達の小型探査船がプラズマの影響を受け、揺れ始める。


「どうしたんだ!」 

「わからん! 彗星の後から突然」

「アルフレッド、宙域圧力の上昇が止まりません、五万を超えました」

「まずい! 潰されるぞ!」

「急いでこの惑星から離れる! アクシオン・ドライブを起動しろ!」


ЖЖЖЖЖ バァァァァァァ!!!!!! ЖЖЖЖЖ

ЖЖЖЖЖ バァァァァァァ!!!!!! ЖЖЖЖЖ


しかし、惑星内のプラズマはその反応をさらに活発化させてゆき、


~ ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ ~


重苦しい殷雷いんらいを轟かせ、周辺宙域を揺らしその圧力を高めていった。


「アルフレッド! やばいぞ!」

「ガス惑星の様子が変だ!」

「う、ウランが蒸発し、惑星が…

その時


≪《―――ゴッ!!    ッツ!!  バァァァァア!!  ッツ!! 》≫


突然、巨大なガス惑星に滞留した大量のプラズマが惑星外へ放出!

「うわぁ!!」


そのプラズマはアクチノイド岩石惑星の強磁性に引き寄せられて、岩石惑星へと向かっていく。


ЖЖЖЖЖ バァァァァァァ!!!!!! ЖЖЖЖЖ


―ガガガガガ!!

アルフレッド達の乗る探査船が激しく揺れる。

「アルフレッド!! ガス惑星の地殻変動に巻き込まれます!!」


ピィ! ピィ! ピィ! ピィ!


次の瞬間!

アルフレット達の目の前を、強烈な閃光が周りを覆うと

蒼白いプラズマが二つの惑星を  繋ぎ



――――――――――――――――――――――――



二つの惑星間に  巨大なプラズマ帯が発生した



その巨大な惑星間のプラズマ帯は


アルフレッド達が見ている前方の空間を歪め


激しいプラズマの振動と共に


その中心が開いてゆき


その開いた空間には



この宇宙とは別の 宇宙 が広がっていた




「 …ス  スター… ゲート運命の扉 」













ビィ! ビィ! ビィ! ビィ!


「アルフレッド!!」

ガガガガガ!!


『 離脱しろ! アルフレッド!! 』

突然、アルフレッドの意識にアンタ・カラーナ多次元素粒子通信が入る。


「ち、 地球から!」


「アルフレッド! アルフレッド! プラズマの渦に巻き込まれていきます!」

 

ガガガガガ!!

ピィ! ピィ! ピィ! ピィ… 

















数時間後


未知の惑星系に起きた巨大な変動は収まり

 

また宇宙に静寂が訪れた



 アンカー・ポイントに到着したマクシミリアン達は、アルフレッドからの通信が途切れ、

残された少ない情報から、惑星系でロストした事を悟った。


「アルフレッド…」

「未知の重元素が観測された のに… お前は…」



 その情報は、地球にも送信され、スター・ゲート運命の扉の奥に隠された物質が、

Sir アルフレッド・グリフィンにも届けられた。


 ジェフリー博士が探し求めていた重力を発生させる重元素、

原子番号333 Fortuna est rotundaフォルトゥーナ・エスト・ロトゥンダ. として

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遥かなる星々の物語 第一章 「 スター・ゲート 運命の扉 」編 END

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