第4話 キセノン ガス惑星

 謎の彗星から発せられた複合周波サイマティクスは、その振動波で奏でられる音色と共に、その美しい姿で、慎重であるべき研究者達の心を捉え、その行く先に引き寄せられるように、

アルフレッド達は3.7パーセク先にある未知の惑星探査に向け準備を始めた。

 未知の惑星を探査するアルフレッドとは別れて、探査船をアンカー・ポイントに進めるマクシミリアンは、トランスファー素粒子転送装置を使い、未知の惑星系内に存在する物質を使用する事で、探査に必要な機材を生成すると、それをアルフレッドに託した。

 

アルアルフレッド、小型探査船と各自のボディを惑星系内に生成したぞ、場所は恒星から約十五億キロの小惑星帯だ」

「事前に無人探査機は展開しているな」

「あぁ、すでに活動中だ、宙域組成はここと変わらないが、圧力は五百パスカルと低い」

「今わかっている事は、アクチノイド系の岩石類を持つ惑星と、キセノン系の巨大ガス惑星が存在している事だ」

「成程な、放射性物質であるアクチノイドやキセノンから何かしらの強磁性が発生し、彗星を引き寄せ強力なスイングバイを発生させているのかもな」

「自然の超電導か、凄いな…」

「何かの切っ掛けで、その二つの惑星が引き合うかもしれないな」

 ヴィッカリー博士が興味深そうに二人の会話に入ってきた。

「確かに…」

「あり得ますね、博士」

 アルフレッドはヴィッカリー博士の話を聞くと、その推測が少し気になり、事前に確認をしようとメインパネルにアクセスしかけた時、

「アル、そろそろ時間だ」

 マクシミリアンが転送の時間が近付いている事をアルフレッド達に伝え、アルフレッドは確認を止め転送フェーズの確認に入り、


…現地で確認するか


博士の推測は後で確認する事にした。


「よし、トーマス、エレン、ヴィッカリー博士、用意は良いですか」

「探査期間は六十日間、時間のディレイはほぼ無い」

「了解だアル、フォルトゥーナ運命を手に入れようぜ」


カァン!

 未知の惑星系へとトランスファーするメンバーは肘を当て合い士気を高め、希望を胸に、

フォルトゥーナ運命の扉へと転送していった。


ゴォォォォォ! …

「アル、帰って来いよ」







「アルフレッド」


「マスター・デウス、どうしました」

「サジタリウス・アームのNo.4からアンタ・カラーナ多次元素粒子通信が届きました」

「あぁ、ジェフリー博士の探索をしている領域だな」

「はい、未知の複合周波サイマティクスを捉えた様で、その行く先に未開の惑星系を発見し、探査を始めたそうです」


「なるほど、 あれが 見つかるといいな」


「はい」


「地球は、文明の黎明期から気温が20%上昇し、それに伴い気圧も上昇、十憶年の変化を人類はたった数千年で起こしてしまった」

「地球は生命体が生きて行くには過酷な世界になってしまったよ」

 

 月の無い夜空を見つめて、Sir アルフレッド・グリフィンが言葉を続ける。

 

「時折、リンケージしてみるか」―




 未知の惑星系にトランスファーしたアルフレッド達は、無事に予定の小惑星で起動し、マッチングチェックを終えると無人探査機と連携し探査を始めた。

 最初の三十日間で初期探査を行うと、この惑星系の全域を調べ、その全容が明らかになってきたが、地球と関係している痕跡を発見する事が出来なく、この探査の科学的調査を担当している科学者のトーマスは、初期調査の結果から調査が次の段階に入る必要性を感じると、調査結果を表示しているメインパネルを見ながら話し出した。

 

「外からの探査では限界があるな」

「そろそろPhase2に移行する段階だが、幾つかの惑星に上陸をしてみるかトーマス」

 アルフレッドが調査プランを見ながらトーマスに応える。

「あの巨大ガス惑星はどうだ」

「岩石系の惑星はスキャニングで大まかな事は判ったが、あのガス惑星だけがよく分かっていないしな」

「でも、あのガス惑星はキセノンの雲が厚く、放射線の影響で地表との距離が測定出来て無いわ」

 少し心配そうな声色でエレンが話に入る。

「そうだな…」

 アルフレッドは少し悩むと、トーマスの方を向き、

「トーマス、あのガス惑星の調査方法を検討してくれるか」

「OK、アルフレッド、無人機を十二機程度、探査用に使ってもいいか」

「了解だ、トーマス」

「よし、探査はPhase2に移行し、各惑星の詳細探査を始める」 

 未知の惑星系探査は各惑星の詳細探査の段階、Phase2に移行し、その最初の探査をする惑星に、巨大なキセノンのガス惑星に定め、科学者のトーマスが無人機を活用した上陸作戦を検討し始めた。


 この巨大なガス惑星は直径約二十六万キロ、約四万キロのキセノンガスが大気の約90%以上を占め、その下に八万キロの液体ウランの海と、直径約二万キロの中心核を持ち、その主成分のほぼ全てが放射性物質であるために、常に放射線の影響を受ける、電子機器で構成されているArdy達には厄介な惑星であった。

 トーマスはそれらを考慮し探査計画を策定し終えると、

数時間後、アルフレッド達に探索案の提案をした。

 

「二段構えの作戦だ」

「まず、無人機による全域測定を行う、進め方は簡単だ」

「対放射線シールドで守られた十二機の無人探査機を地表までゆっくりと降下させ、エリア測定を行う」

「無人探査機は時差を付け降下、ロストしたら全機停止、状況を把握」

「通信は放射線シールドをした有線で行う、アナログなやり方だが、確実性はある」

「一段目で状況把握、二段目で乗り込むわけか」

 ヴィッカリー博士がモニターに映し出されたプランを確認しながら話をする。

「はい、あのガス惑星の性質から、我々が内部に入り調査を行うにはリスクが高いです」

「ただ、二段目で乗り込むとして、問題は圧力だな」

「そうですね。地核付近の圧力は一万を超えると予測されます。その為に、事前調査を全域で行い、内部調査が必要なら、我々が乗り込んでも良いポイントを探り、その後の方針を策定するべきだと考えます」

 アルフレッドは軽く頷き、

「よし、一段目はそれで行こう」

トーマスの提案に応えた。

「探査までなら問題無かろう」

 ヴィッカリー博士も、それを了承したが、少し首を傾げ、不安そうな声色でエレンが会話に入る。

「二段目は、どうするの」

エレンがトーマスに質問すると、

「基本的には無人機での探査になるが、上陸が必要な場合は、あの惑星の圧力と放射線に耐えられる探査船を用意する必要があるな」

 トーマスが応え、

「まぁ、まずあの惑星の状況を調べてみないと、第二段目は策定できないよな」

 アルフレッドがエレンを見ながら、それを補った。

「気になるのは、ヴィッカリー博士の推測よ」

「あぁ、あの二つの惑星が引き合う事か」

「そう、もし二段目で私達の潜航が必要になった時に、仮に二つの惑星が引き合う状況になったら逃げ出せないわよ」

「確かにな、でもエレン」

「今の所、その兆候は見られない、それに、もしその状況を引き起こす切っ掛けがあるとして、今はそれが何なのかが解らない」

「その心配を減らすためにも、第一段目の探査でじっくり調べようと考えてるが、どうだ」

 アルフレッドはエレンを諭した。

「… そうね」

 エレンはまだ心配そうにしながらも納得したが、

しかし、エレンが心配する事は、アルフレッド自身も気になっていた事であった。


『…第一段目で明らかになるさ…』

 アルフレッドはそう考えると、トーマスの提案を了承し、キセノンのガス惑星探査を進める事となった。


ゴォォォォォ…

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