第37話 誕生日
今日は九月十七日、俺の誕生日だ。大学はまだ夏休みなので、気ままに今日のごちそうを作っていた。今日のメニューはアボカド入り海鮮ちらし寿司に、とり天とアボカド天、ほうれん草のごま和え、吸い物だ。
天ぷらも揚げ終わったなというところで、ドアの鍵が開けられる。良いタイミングだ。
「ケーキ買ってきたよー」
「おーありがと――グェッ⁉」
思わず喉から変な声が出た。これは仕方無いと思う。茜はかなり露出度の高い格好をしていたのだから。茜が着ているのは白のオフショルダーのブラウスに、黒のミニスカート。
鎖骨どころか肩まで全部見えている上に、スカートは膝上一五センチほど。綺麗な脚が惜しげも無く晒されている。少し屈んだら、胸とか見えそうで色々危ない。
「料理運ぶね」
「ありがとう……、じゃなくてその格好は何だよ?」
「普段着」
「嘘つけ。お前のそこまで露出のある格好なんざ見たことねえぞ」
まさか茜はこの格好で外に出てケーキを買ってきたのだろうか。こんな格好を他の男に見せたのだろうか。色々心配になってくる。
「大丈夫だよ。さっき着替えてきたばっかりだから」
「さらっと俺の思考を読むな。それなら良いけども……」
「早く食べようよ」
「分かった分かった」
出来上がった料理をテーブルに並べて、茜と向かい合って座る。料理は我ながら上手く出来たと思う。海鮮ちらし寿司は、いくらとマグロの赤と、サイコロ状に切った卵焼きの黄色と、アボカドの緑が良い感じだ。
茜は食い入るように海鮮ちらし寿司を見ていた。先日の一件以来、茜はより表情豊かになったというか、リラックスした表情が多くなった気がする。元々、そんな顔はしていたけど、見る機会が増えたというか。俺はそれが嬉しくてしょうがない。
「「いただきます」」
「めっちゃ美味しい」
「そうか、そりゃ良かった」
いつも通り、茜が美味しいと言ってくれる。そんな当たり前の連続が無性に心地よい。そんなことを思いながら、箸を進めるのだった。
* * * *
「あー、ケーキ美味かったな」
「良かった、りっくんモンブランが好きって言ってたから」
ケーキまで食べ終えて、俺はベッドで寝っ転がっていた。茜はイチゴのショートとモンブランを買ってきてくれたが、特にモンブランが絶品だった。
ウトウトとまどろんでいると、頭にコトリと何かの箱が置かれる。
「ん? 何だコレ?」
「誕生日プレゼント」
「おお、ありがとう」
上体を起こして、包装を開けるとお高めのボールペンが入っていた。シンプルなデザインが格好良い。
「格好良いなコレ。ありがとう、大切に使うよ」
「うん、あと……もう一つプレゼント……」
「うん? まだ何かあ――」
言葉を言い終わらないうちに、俺は茜に押し倒されていた。瞬間、唇に柔らかいものが押し当てられる。俺の乾いていた唇が僅かに湿る。そして五秒程経った後に、茜が顔を離す。
「あの茜さんや……、立場逆転してませんかね……」
「りっくんが悪いんだよ……、あの日から三週間経っても一切手を出してこないし……」
「いや、あんな話を聞いた後だから、もしかしたらお前がそういう事に嫌悪感を抱いているかもと――」
「うるさい」
直後、二回目の口づけで強引に唇が塞がれる。唇を蕩かすほどに情熱的なキスだ。ただそれだけでは終わらなかった。
瞬間、唇の隙間から這い入るようにぬるぬるしたものが口に進入してくる。柔らかくてざらついた何かが口の中をおずおずと這う。やがてそれは俺の舌に接触すると、激しく絡ませてきた。
「――んっ!」
どちらとも分からない声が漏れる。唇を重ね合わせるだけでは到底味わえない快感、感触。俺の背中に回された茜の手に、俺を逃がすまいと力が込められる。
……ここまでやられっぱなしで済むと思うなよ。
俺は力任せに寝返りをうって、茜との立ち位置を入れ替える。構図が逆転し、俺が茜を押し倒す形になる。
仕返しだ。
俺は先程、茜がしていたことをそっくりそのままやり返す。
「⁉ んんっー」
声にならない声をあげた茜が、俺の背中をバシバシと叩く。ようやく口を離してやると、茜は涙目で俺を睨んでいた。頬どころか耳、首筋まで真っ赤に染めて、口元はどちらの唾液とも分からず、濡れていた。
「いじわる……」
「煽ってきたお前が悪い」
「それはそうだけど……」
バツが悪くなったように、茜が視線を彷徨わせる。仕掛けてきたのはそっちからだろうに。
「やめるか?」
「……続けて」
俺はその言葉を聞くと、手を服の中へと進入させて、ある一点を目指す。
「ちょ、ちょっ、そんなところに手を……?」
「そういう服を着てるってことは、そういうことだろ?」
「脱がせてから触るもんじゃないの……?」
「知らん」
胸に手を触れると、まず胸を覆っているブラの固い感触が手に当たる。そして手に僅かに手に力を入れると、脳が支配されるほどの蠱惑的な柔らかさが感じられる。
「……ん……」
直接触れたい。そんな欲求がが頭の中に弾ける。熱で思考がぼやけていく。
「あ、あのあの脱がすときは電気を……」
「ダメです」
茜の要求を無視して先へと進める。そこからはもう止まることは無かった。
* * * *
「あの、りっくん、そろそろ良いんじゃないでしょうか……」
「茜は初めてだろ? しっかり準備しとかないと」
「だからって一時間も――んっ」
涙目になった茜が俺に早くしてくれとせがんでくる。もうそろそろ限界だ。というか茜が可愛い。その仕草だけで嗜虐心が煽られてくる。もう何かに目覚めそう。
後は言うまでも無い。俺と茜は世界で一番の極上の時間を味わった。今日で一段と俺たちの仲は深まった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あと何話かかるかは未定ですが、もうすぐ完結させます。
最後までお付き合い頂けると嬉しいです<(_ _)>
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