第2話

最後の最後に残業になったな。定時ギリギリに電話受けちゃって。話好きなおばちゃんで長引いた。コールセンターってこういうことがあるんだよな。

あたりが薄暗くなる中、駅に向かって歩いていた。今日でもう来なくなるのか、次の仕事はもう少し長期のもの探さないとね。転々としているのも疲れるわ。

駅に着くと、駅員さんと学生ぽい男の子が立っていた。なんか見たことある気が…。あれ?ランチで行ったお店の男の子じゃない。どうしたんだろう。

話に聞き耳を立てていると、どうやら定期や財布が失くしたみたい。

駅員さんも男の子も困っていた。

私は券売機で、切符を購入した。

「すみませんでした。うちの弟が。」

気付いたら、無意識のうちに二人に近づいて謝っていた。その場からさりたかったけど、今更なので「これ、切符」と男の子に差し出した。彼を見ると一瞬戸惑っていたが、「ありがとう、姉さん」と言って受け取ってくれた。

それを聞いて駅員さんが、

「なんだ、お姉さん呼んでたんならそう言ってくれないと。危うく警察に連絡するところだったよ。」

「本当にすいませんでした。ご迷惑おかけしました。」深々と頭を下げ、改札口を通り、ホームに向かった。

ホームには電車が来ていて、慌てて乗った。

「ありがとうございました。」

改めて、彼が言った。

「いえ、ごめんなさい。しゃしゃり出ちゃって。」悪いことはしていないのになんか急に恥ずかしくなった。

「あのー、後でお金返しますから。よかったら連絡先教えてくれますか。」

面倒なことにさせたくなかったので、「これは別にいいです。それより、財布見つかるといいですね。」と言ってはぐらかした。

「いやでも…」

彼は腑に落ちない様子だった。

「いいから、気にしないで。私が好きでやっただけだし。」

それから終着駅まで黙っていた。

駅に着き改札口を抜けてから彼が、

「あのやっぱり、お礼しないと。これ連絡先です。あとで連絡ください。失礼します。」そう言って、肩にかけていたカバンに、紙を押し込み、走ってその場を去っていった。

取り出してみると、いつの間に書いたのか、ノートの切れ端に名前・メアド・携帯番号が書かれていた。

いや、困ったな。余計なことしなきゃよかったかも。その紙をコートのポケットに入れた。

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りゅうとたつ りおんりお @rion04

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