最初の住人はいともたやすくその権利を明け渡す
いつもの円卓にいつもの7人が座っている。前回と違うのは料理がないのと、ユイがいないということだ。
「ダリー、ガキは?」
「店の手伝いしてるよ。会いたかった?」
「是非とも会いたかったね。また三日三晩当てのない旅に出させてもらおうかと思ってたんでな。」
ギャップの軽口に円卓は賑やかさを増す。
「レックス、作業は?どんな感じなんだ?」
「中はもうきれいだよ。水道も使えるし。今は埋まってる部分を掘り起こしてるところ。」
レイの問いかけにレックスは無表情で答えると、今度はリグレットが口を開く。
「持ち上げるのは?できそうなの?」
「無理でしょ。とりあえず窓とかが埋まってるから土を退けてはいるけど出来上がってる城をそのまま上に持ち上げるのなんて出来るわけないじゃん。」
「じゃあ穴に落ちてる城みたいになるわけだ。」
「そうだね。ていうか、みんなこの2か月一回も手伝いに来てくれなかったよね。作業があんまりにも進まないから契約してる魔獣全部出しちゃってるんだけど。」
レックスはあきれ顔で文句を言い出す。
「いや、悪かったって。その間みんなもちゃんと働いてたんだよ。」
レイが簡単に謝罪を済ませ、弁明する。
「とりあえず資金調達ね。みんなどれくらい稼いだ?」
レイに促されダリーとリグレットがテーブルに袋に入った金を出す。
「ダリーお前何したらそんなに稼げるんだよ!」
リグレットが驚きの声を上げるのに対しダリーは飄々と答える。
「回収屋再開してたから。みんなこんなもんかと思ってたけど、逆に何してたの?リグレットは掃除屋でしょ?」
「いや、俺は協会に魔獣売ってた。」
害獣駆除協会。人間に害をなす魔獣を駆除することでその種類、数に応じて金銭を支払う団体だ。ゴブリンや、オーク、ゲイルウルフなども対象である。街の防衛等も行っている。デルタの勤務先。
「真面目に稼ぐ気あったの?ギャップたちは?」
ダリーの言葉にリグレットはうつむく。
「俺とフラッシュも同じだよ。。。でもさ、あいつら前よりも金払い悪くてさ。。。一応ちゃんと働いてはいたんだって。」
ギャップが気まずそうに答える。
「デルタは?」
レックスが尋ねると呑気な顔をし、金を出しながら答える。
「俺はレイと一緒に協会に盗みに入ってたよ。だからほら、こんなに稼いじゃった。」
デルタが取り出した袋は両手でも抱えきれないほどの大きさで、口を開けると中身はすべて金貨であった。
「うぉ!すごいじゃん!」
ダリーが感嘆の声をあげると、デルタは満足そうな笑みを浮かべた。
「俺らが稼げなかったのってレイたちのせいじゃん。」
フラッシュがぼそりとつぶやいたのをかき消すようにレイが次の行動を発表する。
「じゃあ行くか!家具の調達に。」
レイ、ギャップ、デルタ、フラッシュの四人は家具の買い付けへ、レックスとリグレットは城に行き、ダリーは帰宅した。
7人で毎日せっせと家具を運び、レックスの魔獣たちが城の中へと設置する。作業が終わるまでは丸2週間かかった。その後も木を伐り土を運ぶ作業は続けられすべての作業が終了したのは、初めて遺跡を訪れた日から半年後のことだった。
「じゃあ今日から建国を本格始動する。全員準備はいいか!」
『おー!』
レイの掛け声に6人は元気いっぱいで応える。
「今日からここに住むってことだけど大丈夫だな?」
「。。。おぉ」
リグレットだけが小さく返事をした。
「ここってさ、こんな村みたいになってたっけ?」
デルタの疑問ににレックスが答える。
「作ったんでしょ。魔獣たちも住む場所がいるし、いつまでも共食いばかりさせてても悪いしね。最低限の衣食住は自分たちで自由に確保していいって言っておいたから。」
「ここに国創るんだよね?」
ギャップの問いかけにはレイが笑顔で答える。
「もう国民300人じゃねぇか。」
かくして魔獣たちのではあるが、そこそこの規模の村が誕生したのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます