猛き者も三太郎、ひとへに風の前の塵に同じ
遺跡はマロン王国とマグナ帝国の国境付近、魔蛇の森にあった。
森には、1000年も生きた巨大な蛇がおり、見られたものは蝋で固められたように体が動かなくなり、ゆっくりと丸のみにされる。という言い伝えがあるため普段は人は寄り付かず、その土地の所有権も曖昧なものとなっている。
「やばくね?魔蛇いるんでしょ?」
赤髪の男が肩をすくめて言うと、樹海へと足を進めつつダリーが答える。
「大丈夫!いなかったから。」
「リグレットはビビりだなぁ。早くいかないと置いて行かれちゃうよ。」
赤髪の男、リグレットは騎士風の男に促されおずおずと歩き出す。
「ダリー!そもそもこんな場所何の用事があってきたんだよ!」
一番後ろを歩くフラッシュが大声で先頭のダリーに問いかける。
「いやさ、ここって誰も来ないじゃん。だからおっきい魚とかいるかもって思ってね、釣りに来たんだ。そしたらもう吃驚だよ!」
「遺跡があったてか。」
レイが口をはさむ。
「いや、お前らさっき食った魚なんだけどさ、こんなでっかいのが居たんだよ!」
ダリーは幼女を肩車したまま両手を広げ楽しそうに話す。
「お前!こんなところで獲ったもん俺らに食わせたのかよ!」
リグレットの言葉に肩の上の幼女が怪訝な顔をする。
かくして一行は賑やかに歩くこと30分ほど。目的の場所へとたどり着いた。
遺跡は街風ではなく、城のような形をしている。成形した石を積み上げたような壁には苔や蔦がびっしりと生え、中は暗く湿り気を帯びている。そして入り口には“DARY's HOUSE”と言う看板が立てられていた。
「お前。。。」
レイがあきれたような顔でため息をつく。
「中はどうなってるの?」
騎士風の男が聞く。
「怖いから見に行ってない。」
「不死身でしかも神の力があるってのに怖いことなんかあるかよ。」
「お化けとか出たらどうするんだよ!能力だってタダじゃあねえんだよ!魂を糧にするんだ死ぬよりもつらいぞ。お前の魂を溶かして名前をデルタじゃなくてカルタに書き換えてやろうか?」
「そんなことしても俺はもう魂の抜けた体になるわけだからどうってことないけどな!」
「魂の再生くらい造作もないんだよ。溶けていく記憶も消さずに残せるんだ。想像を絶するぞ。不死身にしてやってもいい。死にたくても死ねない苦しみも味わってみるか?どうだ、怖いだろう?」
「ぐぬぬ」
騎士風の男、デルタとダリーの口げんかが一段落するとレイが話し出す。
「ダリー、結局廃人になっちまうんだから自分以外で能力は発動するなよ。それに他の奴でやっても規模が知れてるんだろ?」
「まぁ行って十畳分くらいだろうね。」
「あとお前寝てたから聞いてなかったかもしれねえが、これから任務終了まで能力禁止な。」
「え?真面目に?遺跡の掃除とか手でやるの?」
「そんなのはレックスにやらせたら楽勝だろ。」
急な飛び火にレックスも黙ってはいられない。
「ふざけるなよ!なんで俺なんだよ。みんなでって言うならまだわかるけど、始める前から俺頼みってどういうことなんだよ!」
「お前だって魔獣にやらせてるだけで自分じゃ何もしないんだからいいじゃん。」
レイの言葉にレックスは変な顔をして応対する。
「とりあえず中見に行こうよ。狭かったらダメだしね。」
最年長でもある灰色のローブの男の一声で次の行動が決定した。
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