第59話 光と闇を統べる者
翌朝、目を覚ますと全裸のアラスと乱れたベッドが目に入った。
俺は見つからないうちに身体を洗い、洗濯をしようと起き上がると――――――
ガチャリ……
――――――足が鎖で繋がれていた。
「……これヤバくない?」
とりあえずこのままでは何も出来ないので、アラスを起こしてお湯とタオルを持ってきて貰い、シーツを洗濯するように頼んだ。
「うわぁ……」
めっちゃ、垂れてくる……どうしよう……
「ティアおはよう!」
「おはようございます」
黙って部屋に入ってきたクレアとフレイヤは後片付けをしている俺と目があった。
「「し、失礼しました……」」
「待ってください!」
そっと部屋から出ていく二人を引き止めようとする俺。
「ご、誤解ですから!」
「ティア、それはムリがありますよ」
「くぅ……」
◇◇◇
それから早くも3週間が経った。その間、全てのお世話をフレイヤたちに任せていたので、もう恥ずかしいことなんて何もない。
俺のプライドなんてモノはズタズタのボロボロだ。
「ティア様、ご準備が整いましたのでこちらへ」
「はいっ」
俺はアラスたちに抱きついて頭を撫でて貰った。
「ティア……これで終わりじゃないよな?」
「当然です。私の人生はまだまだこれからなんですから。……では、いってきます」
「ああ、行ってこい。
戻ったら必ず……な?」
アラスに頬を撫でられ、俺はリアムと共に部屋を出た。
「まさか、生きられると思ってるのか?」
「……思ってますよ。私は他の聖女とは違うので」
「【闇使い】の聖女か。瘴気の影響を受けないというのが事実なら……あるいはな……」
俺とリアムは1つの広間に出た。
そこには大きな魔法陣と俺を逃がさないようにするための鎖が設置されていた。
そして、その魔法陣を観客席から覗く多くの人々。
「私は見せ物ではないのですが……」
「数十年に一度しか行われない儀式だ。その目で確めたい人も大勢いる」
ヒトが死ぬ瞬間を見たいだなんて随分ひねくれた人が多いようだな。
俺は魔法陣の上に立たされ、手足に鎖をつけられた。
「これより、闇の魔力を浄化する儀式を執り行う!」
その声が聞こえた方を見るとそこにはコルトキュル大帝国の聖女とこの前俺と一緒に監禁されていた少女の姿があった。
「世界を代表した聖女様に祈りを!」
いや、祈りとか要らんからさっさと始めてくれ。
「では魔法術式 起動!」
聖女の声が響くと同時に魔法陣が起動し、紫色の光を放ち始めた。
すると魔法陣に引き寄せられるかのごとく【闇の魔力】が集まってきて、俺の身体の中に入ろうとしてくる。
「【聖光】!」
少しでも暴走する確率を下げるため、光魔法で闇の魔力を打ち消しつつ、闇の魔力を受け入れられるように魔力を消費する。
だが、あっという間に世界中から収束した闇の魔力には敵わず、俺の身体の中へと侵入してきた。
「ぐにゃあぁぁぁぁあああ!!!!!」
くるしい……ティナに乗っ取られたあの時とはまた違うような……この闇にも意思があるような……!
「ティ……ナ……」
『わかった。いくよ!』
闇の魔力ごときに支配されたら国王に復讐出来ないだろ! 俺は【闇使い】の聖女だ!
支配される側じゃない……!
「『支配する側なんだ!!』」
俺の中に取り込まれた闇の魔力が拘束され、広場一帯に強烈な衝撃波が放たれた。
「ティア……」
アラスの視線の先には金でも銀でもなく、白くなった髪と【光】と【闇】、両方の瞳を持った少女が映っていた。
「私はもう決めたから……国王を倒して、アラスたちと一緒に生きていくんだって!!」
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