第58話 愛は恐怖を越える……!
周囲がとても温かい光に包まれると俺の身体は元に戻っていた。
「あら……す……」
「ティア!?」
アラスはその場で崩れ落ちる俺を支えた。
「今はゆっくり休め。疲れてるだろ?」
「うん……ありが……と……」
俺はアラスの腕のなかで眠りについた。
◇◇◇
次に俺が目を覚ますと目の前にアラスが居たので、思わず抱きつく。
「ふにゃ……」
「ティ、ティア……!?」
アラスは何処か慌てているように見えたが、俺は構わずにアラスの胸に顔を埋める。
「ずいぶん仲が良さそうだな」
リアムというジジイの声が聞こえて肩を震わせた。
そして、俺がリアムの方を見るとニヤニヤとした顔でこっちを見てきた。
「~~~~~~っ!?」
恥ずかしさのあまりにリアムを殴ろうとしたが、足が何かに引っ掛かってリアムまで届かなかった。
「また暴れられると厄介なのでな。片足を拘束させて貰った。
それと【ティルスティア】の方だが、ティア様が近くにいないと勝手に【闇の魔力】を放つのでな。そこに置いておく。
まあ、届かないから傷つける心配もないから安心しな」
そういえばあの刀の名前【ティルスティア】だったな。あれほど俺にピッタリな名前の刀は何処にもないよな。
『コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス』
うるさい。やめろ。話はあとでゆっくり聞いてやるから今は黙れ。
『…………アラスと濃厚接触!!!』
その台詞だけで顔が真っ赤に染まる。間違えなくアラスたちに不振がられただろう。
「なあティア様、ティナ王女殿下を知ってるか?」
「…………知ってますよ。あの子のことですよね」
俺は刀の方を見るとリアムは驚いた顔をしていた。
まさか俺がティナのことを認識しているとは思わなかったのだろう。
「ちなみにだ。いつから知っていた?」
「存在は刀を手に入れる前からです。私が刀を手にした時に霊体が刀の中に入ってるのも知ってました……」
「では何故浄化しない? アンタにはその力があるだろうに」
「それは…………」
もしこの場で国王に復讐するという意見が一致したからと言えば、その復讐の理由について問われることになるだろう。
だから俺はこう答える――――――
「夢を見たんです。サクラの木の下でティナが殺される夢を、昔からずっと……だから私は彼女の心残りを晴らしてあげたい。そう思ったんです」
「その心残りとは?」
俺はたったひと言、みんなが驚くようなことを言い放つ。
「国王の殺害です」
「「「「へぇー…………」」」」
あれっ!? 反応薄くないッ!?
「そんなこと言われてもまあ、そうだろうなって思ったし……」
「何よりも1人でドヤってるティアが可愛すぎてマトモな反応ができない」
「ティア可愛いかったですよ」
思わぬ攻撃を喰らい、俺は布団の中に潜り込んだのだった。
「じゃあ、アラスは置いていくから。今日はもう遅いし早く寝なさいよ?」
「ティア、おやすみなさい」
クレアたちが部屋から出ていく音がすると同時に俺はアラスの右手を引っ張り、布団の上に乗せた。
「……さっき、こわかった。もう戻れないんじゃないかって思って……」
「そうか……じゃあ忘れさせてやらないとな? いいか?」
俺は小さく頷いた――――――
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