第4章 TS聖女と異世界人と大暴走

第52話 国王を殺すための弊害


 ダイオウイカの討伐から1週間が経った、ある日のこと……


 俺はいつも通りアラスたちと共に依頼をこなして家へと帰ると、何故かエレノアとエドワードが真剣な表情をして悩んでいた。


「どうかしたのですか?」

「ティア、実はな……お前に大きな仕事が来たんだよ」

「え?」


 それからエドワードの話が続いた。

 エドワードが言うには何十年かに一度、この星に纏わりついた【闇の魔力】を1人の少女に預けるという風習がある。


 当然、【闇の魔力】を預けられた少女は魔力が暴走して暴発して死ぬ。


 魔力はヒトが死ぬと星に還るので完全に無意味なことだが、世界各国が――――


『今さら風習を止める訳にもいかないし、数十年に一度聖女が1人死ぬぐらいだし問題ないでしょ?』


 等というアホな意見を述べ、その風習は今も続いているとのこと。


 俺は偶然、選ばれてしまったらしい。



「……いつですか?」

「1週間後にコルトキュル大帝国にある神殿へと向かい、その1ヶ月後に実施だ」


 はい、あと40日後に死にます。さっさと国王殺しておくか。


「だが出発までの期間、ティアが死んだりすると困るから家から出るなというお達しが来てる」


 ……【転移】あるから余裕よ。


「ちなみに監視者が既にスタンバってるから、もし脱け出したらすぐにバレるから気をつけろよ」


 詰みじゃん。もう監視者殺すか。


『そうね。今回ばかりは仕方ないわ。死んで貰いましょう』


 大義の前に多少の犠牲は仕方のないことだからな。


『急に悪役っぽいこと言うのヤメテ』


 よしっ、じゃあ、ちょうど監視の気が弛むであろう3日目辺りの昼にやるぞ。

 昼ならフレイヤたちも依頼で居ないしな。


『了解』



 ◇◇◇


 それから早くも3日が経った。

 この3日間、俺は荷物を片付けつつ、ティナと作戦を立てた。


 だが、その過程で1つ大きな問題が発生した。

 そう、日頃家でダラダラと過ごしている聖女……


『ティアね』


 俺じゃねーよ。エレノアだ。エレノア。


 この家はアイツの領分だ。アイツが居る限り、俺の行動は確実にバレる。

 軽く脱け出すぐらいなら、最後だからと見逃してくれるかもしれないが、殺すとなればそれは別だろう。


『どうするの? さすがに聖女様を殺す訳にはいかないでしょ?』


 というか仮にも10年以上育ててくれた親を殺したりしねーよ。


『うわぁ……ティアがマトモなこと言ってる……』


 なんでマトモなこと言うと引かれるんだよっ!?


『だって……すぐヒトを殺そうとするし、埋めようとするじゃん』


 何を言うかと思えば……そういうのは実際にやったヤツに言えよ。


『……【第29話】』


 うっ!


『【第4話】』


 ぐはっ!? な、何故知っているっ!? あの頃ティナはまだいなかったはず……!


『作品プロットでは私はティアと同時期に生まれたのよ。誰も知らないでしょうけど、私はフレイヤよりもエドワードよりも早く、作者の脳内に誕生していたのよ!』


 知らねーよ。裏の話をすんな。しめるぞ。



 とりあえず話を戻すが、家にいるうちには脱け出すことは不可能だ。そこで俺の考えた案だが……


『神殿から【転移】で国王を殺しに行くんだよね?』 


 そうだ。これで俺は国王を殺すことができる。




『……でもさ、折角逃げるんだったら、そのまま逃げ出せば良くない?』





 ………………あっ





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