第50話 忘れ物には気をつけて!


 俺は全身を闇魔法で薄く覆い、日焼けから身を守る。

 この身体は前世よりもかなり敏感なので、丁寧に扱わないと後で痛い目をみるのだ。


「ティア、ルールは把握したか? いくぞ!」

「はいっ!」


 俺たち四人が遊んでいるのは『ビーチバレー』と呼ばれるアラスの考えた遊びだ。

 ルールを聞いただけではよくわからないので、実際にやってみることに。


「【庭園の花道ガーデン・オブ・ロード】!」


 アラスがボールを撃ち込むとネットより少し上にフレイヤの魔法が通り過ぎて、アラスのボールを弾いた。


「……は?」

「ティア、やりました!」


 おお、なるほど! こうやって魔法を駆使して相手に妨害したりする遊びなのか!

 とりあえずこれで1点先取のようだな!


「フレイヤ素晴らしいですッ!」

「(ま、まあ……いい……か?)

 よしっ、次からは俺も全力でやるぞ!」



 この後、アラスの攻撃によって、俺とフレイヤはボコボコにされました。


 やはり経験の差が出ているようだな。


 ちなみに魔法が使えない憐れな迷える子羊クレアだが、意外とボールを取るのが上手くて、本人も楽しんでいた。


「そろそろ帰るか」

「そうですね。日も暮れてきましたし、戻りましょう」


 フレイヤたちがコテージに向かって歩いて行くのを見て、俺もついて行こうとした時だった。


「っ!?」


 何者かに見られてるような気配を感じ、その方向を見るが、夕陽に当たる綺麗な海しか見えなかった。


 ……気のせいだな。さっ、今日はバーベキューだ。たくさん動いたし、お腹空いたな。


『へぇ、【お腹減った】じゃないんだ? 随分女の子らしくなってきたじゃない?』


 あっ……ごめん、ティナ。忘れてた……


『いいのよ……どうせ私なんてこの海に置き去りにされて、永遠に1人で生きていくんだわ……』


 お前もう死んでるけどな。


 というツッコミは心の中に留めておいて、俺は浜辺に忘れていた刀を持って、フレイヤたちの方に走って行った。


『ティアの心の声、全部筒抜けなんだけどね……』



 ◇◇◇



 バーベキューを終えて、お風呂に入り、俺とフレイヤとクレアは同じ部屋で女子会中。


「あー疲れたー!」

「クレア、お腹出てますよ」

「別にいいじゃない。私はティアと違ってアラスに興味ないから」


「なっ!? なんでそこでアラスが出てくるんですかッ!」


 別に俺とアラスなんてただの政略結婚相手だろ!? 別に関係なくね!?


「ティア、自分に、素直に」


 常に素直なんだが!? あんまふざけたこと言ってると国王と一緒に殺すぞ!?


『ティアは恋愛要素を除けば素直ね。むしろ素直すぎてヤバい感じになってるけど……』


 強制成仏がお望みか?


『ヤメテ』


「でもアラスの方にも問題があるのも確かよね……」

「あの人、ティアへのアプローチがほぼ皆無ですもんね。あの鈍感男め……」


 フレイヤたちが話をしていると段々眠くなってきた。時間を見ると寝る時間にはまだ早かったが、今日はたくさん動いたから疲れているのだろう……

 あっ……もうむりだ……ねむっ……



「すぅーすぅー……」



「少し早いけど、私たちも寝ましょうか」

「そうですね」






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