第48話 リア充め……!


 現在、かぽーんという音が響きそうな感じだ。


 いやー危なかったなー……危うくアラスと一緒に風呂に入るところだったわー

 マジでエレノア様様ですわー


『ホントあの人は余計なことしかしないわね!』


 何を言ってる? 今回ばかりは女神様だろ?


『他人の気持ちも考えなさいよ!

 今の時代、みんなTSっ娘が親友くんとイチャイチャして欲しいのよ!

 ラブコメじゃないTSFにもう価値はないのよっ! くらえ年増ァ!』


 しれっと年増ディスるのやめろ? あと『らぶこめ』ってなんだ? それにTS?

 わからない用語ばっかり出すなよ。理解出来ねーよ。


『って、フレイヤが言ってた』


 言うわけねーだろバカ野郎。


「ひっく!」


 あーこれ風邪引いたわ。今日はさっさと寝るか。


『今のくしゃみ!?』




 ◇◇◇




 翌朝、若干風邪気味ではあるものの、まあ大丈夫だろうとお墓掃除に向かう。


「はぁはぁ、ここまで来るだけなのに……」


 あー気持ち悪っ……頭がボーっとする……今日は手早く終わらせるか。


 それから俺は1時間掛けてお墓掃除を終えた。手早くと言ってもやはり習慣なのか、全部やらないと気が済まない。


「これでよし、帰りますか」


 水の入った桶を持って流し台に向かおうとした時だった。


「……え?」


 足が縺れてしまい、俺は転倒した。その際に桶の中身も溢してしまい、折角綺麗にしたお墓が汚れてしまった。


「あっ…………」


 身体に思うよう力が入らない。必死に手を伸ばして雑巾を掴もうとするが、雑巾には届かずに意識を失ってしまった――――――




 ◇◇◇




 ……あれ? ここは……


「私の部屋ですか?」

「ティア、お目覚めですか?」

「フレイヤ……」



 もしかしてフレイヤがここまで運んでくれたのか?


「迷惑掛けてしまいましたね。フレイヤが運んでくれたのですか?」


 俺がフレイヤに訊ねるとフレイヤは首を傾げていた。


「帰ってきて布団に入ったのは全部ティアですよ? 私は何もしてません」


 え? どういうことだ? 俺はお墓前で倒れたはずだ。自分で動くなんてこと…………ティナ、何か知らないのか?


『知らない』


 俺の中で何か引っ掛かった気がしたが、今は体調が悪いので考えるのを止めて眠りについた。


 次に目を覚ました時には既に夕方になっていて、アラスがお粥を持って様子を見に来ていた。


「食欲あるか?」

「はい、もう熱も下がった感じがするので大丈夫ですよ。私があの時家に帰らなかったから……

 海に行けなくなってごめんなさい……」

「気にするな。別に急いでる訳でもないし、来週辺りにでも行けば良いだろ? ほら、食えるか?」


 お粥をスプーンで掬い、息で熱を冷ましてから俺に差し出してくる。正直男にあーんとかイヤ過ぎるが、起き上がるのも面倒だったので食べさせて貰うことにした。



「はむっ……」

「(これが俺の嫁か!? こんな可愛い娘を貰うのが俺でいいのか!? 俺みたいな引きこもりでいいのか!?)」

「あらす……つぎ……」

「あっ、はいはい」



「「『(この二人、黙って見てればめっちゃイチャつくやん。

 このリア充どもめ……!)』」」







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