第46話 潜伏せし謎の魚


 水着を買い終えた俺たちはアラスと合流して依頼の現場である川の上流にある滝までやって来た。


「ここが依頼の場所か……」

「少し寒いですね……」


 この気温で泳いだりしたら風邪引くな。

 生地の薄い夏仕様とはいえ、聖女服を着ている状態ですら寒さを感じるのだから。


「遊泳はまた明日、別の場所にしましょう」

「「「え?」」」


 フレイヤの意見に呆けた声が出る俺たち。

 明日? 早すぎじゃないか?


「泳がないんですか?」

「……そうだな! しばらく休みにして海にでも行くか!」


 いやいや、さすがにここから海に行くのは…………一瞬だったな。


『かなり遠いけど、見事に浜辺が見えるわね。【転移】し放題じゃないの』


 いや、そうじゃなくてだな……


「エドワード様の別荘に海がありましたよね?」

「はいっ」


 そう、あるんだよ。エドワードのプライベートビーチ付きの別荘がな。


「「『うわっ、さすが金持ち……』」」


 お前ティナだけは言うなッ! 王族だったヤツが金持ちとか言うんじゃない!


「あとで聞いてみましょう。ですが、まずは――――――」

「そうだな。ここに潜む大物を釣り上げてやらないとな」


 というわけで早速、滝の周辺を調査するのだが……




「きゃっ!?」

「ティア、どうした!? ってキモッ!?」


 誰がキモいだとゴラァ!!!


「ゴフッ!?」


 アラスに目掛けて【岩弾丸】を放つとアラスは後ろにひっくり返った。


『……うん、今のはアラスが悪いね。でもアラスが言ってるのは水面の方だよ』


 クレアとフレイヤが俺の元まで駆けつけると俺と同じように驚き、アラスの腹を1発ずつ殴った。


「な、なぜだ……っ!」

「女の子にキモいなんて最低!」

「主語をハッキリさせてください!」


 二人に怒られ、アラスはその場に正座をして――――


「どうも申し訳ありませんでしたァ!」


 ――――土下座で謝ってきた。


「次回からは気をつけてくださいね」


 土下座していたアラスを起こして、今度は四人で水面を覗く。


 するとそこにはだいたい50cmぐらいのサメのような魚が大量に敷き詰まって泳いでいた。


「よく生きてるな……」

「この辺りの魔力値がかなり少ないので、彼らは魔力を糧に生きてるのではないかと思います」


 そして、魔力が最も多い俺に反応を示してこちらの方に寄ってきていると考えるのが筋だな。


「それにしても聞いてたのと量が違い過ぎるでしょ」

「とりあえず討伐をできるだけやって、ギルドに報告しましょう」

「わかった。じゃあ討伐するか。この様子だと他の魚も全滅してるだろうし、魔法を撃ち込んでいいぞ」


 アラスからの許可が降りたので、早速やってみる。


「いきますッ! 【極光】よッ!」



 俺の放った凄まじい光が戦闘開始の狼煙となった。







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