第43話 誰と誰が結婚するって?


 俺がフレイヤとスポーツブラを買いに行ってから三日が経った日のこと。

 それは、アラスの何気ない言葉から始まった。


「なあ、いつまでもここに居ちゃ悪いんじゃないか?」

「そうね……いつまでも英雄様と聖女様に住まわせて戴くのもね……」


 俺とフレイヤはいつもの事なので別にこの二人が家に住んでることを気にしたりしないのだが、アラスとクレアはどうも気になるらしい。


「お金を貯めて家を買おう!!」

「「「!?!?」」」


 なんでそうなるの? 宿屋とかそういう思考はないの?


「そうだな。家がないとアラスくんには俺のティアを任せられないもんな」


 横から会話に入ってくるエドワード。

 任せるってなに? アラスがパーティーのリーダーってことだよな?


『ん? アラスはあんたの嫁ぎ先でしょ?』


 は? 何を言ってるんだ? 俺が男と結婚するわけないだろ? それにエドワードだってこんな話、俺にしたことないだろ?


「あの……ティアがアラスと結婚するから家を買うというのはわかりますが……」

「私たちはどうすれば良いの?」


 ……ちょっと待て。フレイヤ、お前今なんて言った? 誰と誰が結婚するって?


『ティアとアラス』


 ふぅ……そんなわけないだろ。幻聴だ。幻聴。気のせいに決まってる。


「フレイヤは今まで通りティアの世話でもすればいいし、クレアだって…………な、仲間だからな?」

「なによ。思いつかなかったなら素直に言いなさいよ。

 でも4人で生活するのもアリよね……」


 全く、さっきからマトモなことを言ってるのはクレアだけか。


「本当にいいの? 折角のティアとアラスの愛の巣に私が住んでも?」


 訂正。コイツもマトモじゃなかったわ。なんだコイツら。目に何か詰まってるんじゃないか?

 取ってやるよ。


「危なっ!? お前聖女のくせにやることえげつないなッ!?」


 アラスの声が響くと同時に、二階の自室にいるはずのエレノアからとてつもなく冷たい視線が送られてくるのを感じ、鳥肌が立った。


「余計なことを大声で言うのはやめてください。お母様に殺されます……」


 俺は焦ってアラスの耳元に近寄って小声で文句を言った。


「ホント、エレノアにだけは勝てないよな」


 焦る俺を見て笑いながら言うエドワード。

 いやっ、アンタは勝てよ。それでも一応英雄だろ? 旦那だろ? 呑気に漏らしてる暇があったらエレノアのヤツを敷いとけよ。


『今は漏らしてないんだから、やめてあげなさい』



「まあ、そういうわけで早速依頼を受けに行くか!」



 アラスの意見で俺たちは仕度し、街にある冒険者ギルドへと向かった。


 これからは前世では体験したこともない冒険者生活が始まるのだ。


 そして真面目なフリをして隙を見つけたところで王宮に忍び込んで、国王をぶっ潰す!





『聖女とは思えないほど、汚ならしくて卑怯な計画ね……』


 殺そうとしてるんだから変わらねーよ。


『そういうもんかねぇ……』


 そういうものだ。







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