第32話 超天才美少女ティナの英雄譚
「ようこそ、此岸の終着点へ――――」
「…………」
開始早々めっちゃ引かれた。
おい、これぐらい常識だった筈だぞ。どうなってんだ?
『聖女だから箱入り娘だったんじゃない?』
なるほど。箱入り娘だから常識知らずってことか。
……冗談じゃねーよ。俺はこれからコイツと二日間過ごすのか?
『写経でもしてれば大丈夫よ』
まあ……それもそうか。
「我昔より造る所の諸の悪業は、皆無始の貪・瞋・癡ち由る身語意より生ずる所なり。一切我今皆懺悔したてまつる……」
小一時間後――――――――
「三世十方の諸仏に供養し奉らん乃至法界、平等利益……」
「うるさいわねっ! さっきから何なのッ!? 少しぐらい黙れないの!?」
「黙ると言われましてもこれで6日間耐え忍んだので今さら他にやることは……」
「6日っ!? アンタそんなに写経やってたの!?」
めっちゃ驚かれた。まあ、驚くよな。まさか【写経】で6日間も暇潰ししてたなんて誰も思わないもんな。
でもな。
「意外と嵌まるんですよ」
「洗脳しようとしないで! 私は寝るから起こさないでよ」
誰がテメぇなんか起こすかバーカ。
『精神年齢が幼くなってるんじゃない?』
バカ言え、写経だぞ? 老けてるに決まってるだろ。
『言い方に気をつけなさい。それで、この後どうするの? 写経はもう通用しないわよ』
だよな。読者もさすがに写経ネタは飽きてきただろうな。
『読者?』
いやっ、こっちの話だ。気にするな。
そうだ。折角タイトルにもなってるし、ティナの昔話でも聞いてやろうかな。
『……むかーしむかし、あるところに1人のバカがいました』
おい、コイツいきなり何か言い始めたぞ。
『バカは国民を虐げ続けていたある日のこと、街で偶然見つけた美少女に恋をしました。
そのバカは即座に美少女を捕まえ、王宮へと拐って行きました』
完全に魔王ポジションじゃねーか。
『バカは美少女に子供を孕ませるという人間として非常に劣悪な行為をしました。そんな二人の間に産まれた娘、ティナは母親からは愛されるものの、バカからは微塵も愛を受けませんでした』
愛せよ! お前が望んだ娘だろっ!
『そんなある日、ティナの母親が一国の女王であることが判明しました。バカは困りました。まさか自分の愛した女が誰かの妻だったとは知らず、悩みました。悩んだ結果、バカが産み出した答えは【消す】ことでした』
バカ過ぎるだろッ!!! なんですぐに消そうとするんだよ!?
『というわけでバカは刺客を送りました。
しかし、優秀な娘の振るう刀に太刀打ち出きず、返り討ちにされ続けました。それに困った国王は各なる上はと、娘を【とある森】へ呼び出し、そこで外国から雇った剣士に殺させることにしました。
そして、ティナという少女は国王の思惑通り、母親と共に殺されたのでした――――
以上
超天才美少女ティナの英雄譚 第一部・完』
ふむ、物語としては完璧だ……題名を除けばなッ!!!
なんで最後でふざけた!? というかお前死んだ癖に『第一部』ってなんだよ!?
『第二部はティナが腹黒聖女を利用して国王に復讐する物語です』
誰が腹黒聖女じゃ!!
……まあ、それは置いとくとしてお前の母上は女王様だったんだろ?
『そうね』
どこの国だ?
『コルトキュル大帝国』
ファッ!? コルトキュル大帝国だと!?
コルトキュル大帝国……まあ、名前の通りめっちゃデカい国だ。大陸の半分ぐらいを占めるぐらいデカい。国家レベルは最上位だ。歯向かう国はぶっ潰すぐらい。
利用すれば間違えなく復讐を果たすことができるが……
『あの国王のことだから向こうでは帰国中に魔物に殺された扱いで書類とか出してると思う』
そうだろうな。まあ、証拠さえ掴めれば動けるような状態を作っておけばいざという時に使えそうだし、今度行ってみるか。
『そうね。でもまずは冒険者学園を卒業しないとね?』
ああ、そんなものもあったな。まあ、余裕だろ?
でだ。1つ聞いていいか?
『なに?』
俺の真横で寝てる聖女……コイツ登場させる必要あったか?
『さあ? 案外この娘がコルトキュル大帝国の次期聖女かもしれないよ?』
そんなだったら世も末って感じだな。
「『あはっ、あははは……』」
まさか……な――――――?
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