第31話 ティア、監獄にぶちこまれる(ひまっ)
「全く、誰のおかげで生きてると思ってんだか……」
「ホントよね。最近の若者は感謝というのが足りないわよねぇ?」
本音を言えるのもこういう時だけだろうから仕方ないかもしれないが、聖女の裏の顔を見てる気分だ。
というか聖女も近所のおばちゃんと変わらないだろ。違う意見を出せば集団リンチに遭うぞ。
エレノアから離れないようにしよ。
「あらエレノアさん。久しぶりですね。今回はそちらの娘が?」
「そうなんですよ」
「そう。苦しいだろうけど、頑張ってね」
ん? 俺はなにかするのか?
『知らないの? 聖女は10歳になると1週間監禁されて聖女に相応しい人間かをテストされるのよ』
はあ? 何だそのふざけた規則は。
……ちなみに不合格になると?
『聖女に相応しい人間になるまで監禁される』
苦行じゃねーか。俺、一生監禁されるわ。
『諦めるの早いわね……』
「そうそう、聞いた? ゴールランド王国が滅んだ後、あそこの聖女が奴隷の首輪を着けてたらしいですよ」
「ええっ!?」
『ジー……』
んー…………俺、知らね。
「ティアも気をつけてくださいよ。世の中何があるかわからないんですから」
「はいっ」
あー世の中って怖いなー。すぐにヒトを捕まえて奴隷にしたり殺そうとしたり、土に埋めたりしようとするんだもんな。
『特大ブーメラン!!』
それからパーティーを終えると俺はエレノアに連れられ、神殿へと向かわされた。
「ティア、1週間ここに入るのよ」
っと、監獄を前にして言うエレノア。
これ、タイホやん。俺、捕まっとるやん。
「食事は1日1回、見張りの人が持ってきてくれます。ティアならこれぐらいの試練簡単にこなせると信じてますので大丈夫です。
さあ、行ってらっしゃい」
いやいや! お母様!? 娘を笑顔で監獄に押し込まないでくれませんか!?
「あ、あの……」
「それじゃあ頑張ってくださいね」
エレノアが俺を監獄に入れて鍵を掛けた。
「え、ええー……」
◇◇◇
あれから……1時間が経過した。
ヒマッ!!
『お喋り相手がいるだけマシに思いなさいよ』
いや、それはそうなんだが……1時間も脳内ツッコミされてるとさすがに疲れる。
『ティアが変なボケをするからでしょ!?』
仕方ない。久しぶりにやるか。
俺は監獄にあった1本の筆を持って、とある二文字を紙に書いた。
【写経】
『写経ッ!?』
それから五日間、俺は写経という珍しいもので時間潰しをしまくった。苦痛だったのは風呂に入れないことぐらいで、あとは別にという感じだった。
そして写経を始めること6日目、ここに来て今までにないことが起きた。
「上来般若心経を浄写し奉る願わくはこの功徳を以って普ねく一切に及ぼし、我らと衆生と皆ともに仏道を」
「ほら入れ!」
「イヤッ! ちょっと離してよッ!?」
誰か知らない少女が俺と同じ監獄に放り込まれる。
「成せん……こと……を……?」
「なによ」
看守らしき人が鍵をかけて立ち去って行った後、俺のことを見て如何にも自分は偉い人ですよみたいなオーラを放っていた。
俺、こういうヤツ嫌いなんだよな。
『うん、知ってる』
でもさ。こういう時って古代勇者が決めた言わないといけないセリフがあるじゃん? だからさ。これは煽りじゃない。常識的なことを言うだけだ。
俺は一呼吸おき、真剣なポーズを取り、たった一言、とても大切な言葉を告げた。
「……ようこそ、此岸の終着点へ――――」
「(ああ、ヤバいタイプの聖女だ……)」
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