第30話 全世界大聖女祭 開催ッ!


 少女が俺に喧嘩を吹っ掛けて来てから二ヶ月が経ち、冒険者学園は1ヶ月の休暇期間へと入った。

 俺はフレイヤと【転移】で自宅へと戻り、冒険者学園に入る前の生活へと戻っていった。変わったことと言えば、フレイヤの授業が無くなり、代わりにエドワードとの戦闘訓練になったことぐらいだ。


 そんなある日のこと。



「ティア様。明日出掛けますので、準備しておいてください」


 ん? 明日?


「パーティーがありますので」


 なるほど、パーティーか。久しぶりだな。


「はい、わかりました」


 フレイヤに返事をして早速準備をする。とは言っても必要なものは殆どないのだが。



 ◇◇◇



 翌日、俺たちは朝早くに馬車へと乗り込み、家を出た。

 前回馬車に乗った時は腰と背中が痛くて気がじゃ無かったので、今回はきちんと学習してきた。


「座布団ですか。考えましたね」

「お母様の分もありますよ」

「では折角ですので」


 俺はエレノアと座布団を使って腰の痛みから耐える。

 ちなみにフレイヤとエドワードは馬車を動かしているので、馬車の中には俺とエレノアしかいない。


「…………ひまー」

「そうですね」


 俺はエレノアの膝に頭を乗せて暇潰しをしているとエレノアが俺の頭を撫でてくる。

 途中で頭につけているウィンプルが邪魔になったのか、俺のウィンプルを取り外して頭を撫でてきた。


 相変わらず温かくて落ち着く……



「ティア? ここの部分が金色に変わってるような気がするのですが……」

「え? あっ、本当だ……全く知らなかったです」


 俺の白銀の髪がほんの少し金色に変わっていた。

 心当たりがあるとすればティナの件ぐらいだろう。ティナも金髪だったし、変な契約してるせいかティナの影響を受けたのだろう。


『そのうち私が身体を乗っとるかもね』


 ヤメロっ! そんなことするなら今すぐ破棄するぞッ!! せめて国王を殺してからにしろ!


『その後なら良いのね……』


 まあ、聖女なんていう堅苦しいモノごめんだしな。

 聖女の継承式前にはこの国を出ていくつもりだし。


『そんな自分勝手な……』


 そうかもしれないが、俺が聖女に相応しいとは思わない。エレノアには悪いが、諦めてもらおう。




 ◇◇◇


 それから時間が経過し、俺たちはパーティー会場へとたどり着いた。


「腰痛ぇ……じゃあエレノア、ティアのことをお願いな」


 エドワードはフレイヤと共に俺とエレノアを見送ろうとしてきた。


「お父様と先生は?」

「俺たちは行けないから今日泊まるホテルで待ってるんだ。折角のパーティーなんだ。楽しんで来なよ」


 ってことはパーティー会場には聖女しか居ないってことか?

 色んな国の聖女が来てるみたいだし、聖女がどんな感じなのか見てみるか。


「はいっ!」



 俺はエレノアと共にパーティー会場へと入る。チェックインは顔パスだけであっさりと入れた。

 もし変装とかしてる人がいたら大丈夫なのだろうか?


「私から離れないように」

「わかってます」


 一定の空間に群がる全世界の聖女たち。どうやら聖女たちにも身分制度カーストが存在するようだ。




 ……俺の知ってる聖女って近所のおばちゃんだったかな?







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