第27話 龍災、来てくれないかなぁ?


「皆さま、おはようございますっ♪」

「ティア様雰囲気変わってる!」

「そうですか? ありがとうございます」


 俺は冒険者学園でいつもとはちょっと違った日常を過ごす。

 服装が黒から白に変わっただけでだいぶ印象が違うようだ。


 なんか、今日は面白いことが起こりそうな気がする!


「聖女様、聞いたか? ゴールランド王国が滅んだってよ」



 ワーオ。お国が滅んだのですか。それはまた随分とおもしろ……悲惨なことが起きましたね。


『隠せてないわよ』


 『ゴールランド王国』とは俺たちの住む『アマヤ王国』から少し離れた場所にある王国のことで、制度がこの国と同じ『絶対君主制』なのだ。

 おまけにゴールランド王国とアマヤ王国は協力関係にある。だから国王を殺した後、確実に邪魔となる存在だと考えていた。


 そんな邪魔になるであろう国が滅んだ。

 ……これはもう言って良いでしょ?



 やったーッ! クソ王国滅んだァ! ばんばんざーい!




『聖女様の知力低下が見えるのだけど……

 でもあの国の戦力はここら辺ではかなり上位だったはずよ。そんな国が滅ぼされるなんて一体何処の国がそんなことを……』



「なんでも龍災だったんだってよ。王宮目掛けて龍の息吹が炸裂! 王族が根絶やしになったところで隣国が攻めてきたらしいぜ」


 それはまた随分素晴らしい奇跡が起きたもんだな。


「それはまた大変ですね。龍災は人々を苦しめるのですね……」


 あーあ、うちにも龍災来ないかなぁ。


『聖女がなんてことを考えてるのっ!?』


 だって龍災来ればこの国滅ぶんだぞ。国王だけ死ぬ直前にさらって、地面に埋めて頭をひたすら蹴り続けられるじゃん。

 ウザいヤツの顔面を無限に蹴られるんだぞ? もう最高じゃね?


『…………それもそうね。龍災、来てもいいわね』


 だろ? じゃあ早速【転移】で龍の巣まで――――


「見つけたわよっ! アマヤの聖女っ!」


 突然教室の扉が開いたと思えば、俺と同じぐらいの身長を持つ見知らぬ女の子がいた。

 …………誰だコイツ?


「アンタのせいでウチのお家が滅んだじゃないのッ! どうしてくれるのよッ!?」


 ファッ!?


『ティア何かやったの?』


 いやっ、全く記憶にないぞ。そもそも誰だコイツ。会ったのも今日初めてだし、何を言ってるんだ? ウチの国が……滅んだ?



「…………ブッ!?」



 思わず吹き出してしまったが、何とか笑いを堪える。

 コイツあの国ゴールランド王国の聖女か! いやっ、年齢的に次期聖女か! お前最高だなッ! 聖女ってみんなエレノアみたいな堅苦しいヤツかと思ってたが、こういう輩もいるんだな!


「な、なにを笑ってるのよッ!!!?」

「ごめんなさい……ここまで清々しい八つ当たりは久しぶりでつい……ぷふっ!」



 ダメだ。コイツ見てると笑えてくる。

 この聖女腐ってるからもうざまぁとしか思えないッ! おまけに俺に八つ当たりしてくるとか!









 ―――――――殺されたいの?











『急に怖っ……』






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