第24話 転移魔法最強説!
【転移】で王都まで戻ってきた俺はまず変装に必要なローブや手袋などを寮まで取りに戻り、ついでに今回の凶器となる包丁を手に取って王子の待つ王城へと【転移】する。
『【転移】万能過ぎるでしょ……』
まあな。
消費魔力も的確にイメージしてるから一般人の半分以下だし、無駄な魔力を出してないから痕跡も残らない。
もはや俺は【転移】を使って国王を殺すために生まれてきたと言っても過言ではない。
『過言よ。あなた聖女でしょ。あなたはイーリス様に祈りを捧げるために生まれてきてるのよ』
誰が悲しくて祈りを捧げるだけの人生を生きるんだよ。そんなのつまらないだろ?
ティナはどう思うよ。一年中休み無く聖書や聖典読まされて、掃除とお祈りと誰かが喜ぶ姿を娯楽とし、親が決めたよくわからない男と結婚させられる人生だぞ。
お前はこんな人生歩みたいのか?
『……ごめん』
さて、話を戻すか。
今こうして俺たちはぼーーーーっとして時間を無駄に過ごしている王子の真後ろで包丁を構えている。
このままヤっちまうか?
『急展開すぎるでしょ……』
このまま殺しても良いのだが、やはりどこか味気ないな。何が足りないんだ……?
『ん? 煽り行為じゃないの? お父様と違ってそんなに顔を合わせてないんでしょ?』
なるほど。そういうことか。じゃあコイツこのままを殺すのは勿体ないな。もう少しコイツがウザく成長してから殺すことにしよう。こういうのは成長してからの方が良いものだ。
特別に今は池に放し飼いをしてやろう。
『私の弟は小魚か』
殺さないなら長居は無用だ。撤退するぞ。
『はいはい』
俺は再び【転移】を使って冒険者学園の寮にまで戻ろうとしたのだが……
「干渉された」
『はい?』
気がついたら知らない空間に居た。
いや、ただ暗いだけで俺はこの場所を知っている。
「あなたは土属性の魔法は使えないはずでしたよね? イズさん?」
「あら、名乗った記憶も使える魔法も教えたことないのだけど、さては調べたのね」
本当は調べてもないけど、勘違いしてくれてるならそれでいいや。
ここはイズの研究室だ。よくわからない珍しい物がたくさん置いてある。帰り際にいくつか持って帰ろう。
「王子を殺すんじゃないかと思ってヒヤヒヤしたわよ。あの子は次期国王として利用価値があるからね。
……ねえ、お父さんの『ひみつ』知りたくない?」
「ひみつ?」
俺は首を傾げた。エドワードの秘密……?
あんな脳筋にある秘密だなんていったい何があるというのだ。俺には全く想像がつかない。
「秘密ってどんなのですか? お友達が居ないことですか? それともお風呂でお漏らししたことですか? お母様の尻に敷かれていることですか?」
「え"っ!?」
何故か驚いた表情をして若干引くイズ。いったいどうしたというのだろうか?
『英雄さん、あなたの黒歴史が娘の手によって盛大に暴露されてますよ』
「(風呂で漏らした!? あの英雄が!? バカじゃないの!?)」
少し待つとイズは俺を椅子に座らせてお茶を出してきた。
「でも国王と戦う武器無くて困ってるんじゃない? この短刀あげるから、お姉さんのお願いを聞いてくれると嬉しいな?」
前世の俺が使っていた短刀を見せて何か言ってくるイズ(38歳・独身)
正直言ってこの短刀は欲しい。前世から使っていた相棒だからな。
「何をするのですか?」
「簡単なお仕事よ。明日、学園に変な人が来るから、ソイツを捕まえてここまで連れて来てくれればいいわ」
「……わかりました。では私はこれで」
俺は【転移】で学園へと戻ったのだった。
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